日経メディカルのロゴ画像

日本透析医学会2011
ESA低反応例以外で同薬剤は心・脳保護に有用
透析患者で心イベントは35%減少、脳卒中も有意増加認めず

2011/07/12
軸丸 靖子=医療ライター

九大の鶴屋和彦氏

 腎性貧血に対する赤血球造血刺激因子製剤ESA)投与は慢性腎臓病CKD)患者の心機能を改善させるといわれるが、近年、ヘモグロビン値を健常人と同程度まで上昇させても心血管疾患は抑制されず、逆に脳卒中リスクが上昇するという大規模試験の結果が示され、CKD患者におけるESA治療の是非が議論になっている。

 九大包括的腎不全治療学の鶴屋和彦氏は、第56回日本透析医学会(6月17~19日、開催地:横浜市)のシンポジウム「透析患者の心血管病変の管理」で、わが国の透析患者を対象とした「Qコホートスタディ」の解析結果を紹介。「ESAに対する反応性が低い患者以外は、ESA投与によって透析患者の心イベントの発生は35%減らすことができる」と述べた。

 CKD患者の貧血治療に広く使われているESAには、心筋への負荷減少などを通じた心血管疾患の抑制効果も期待されている。

 実際、ESAの心保護作用を示唆する介入研究は多くある。今年発表されたメタ解析でも、心不全患者に対するESA治療は心機能の改善、運動能力の向上、心不全による入院回数の減少、総死亡率の低下をもたらすと結論した(Kotecha D, et al, Am Heart J. 2011)。

 しかし、「すべての研究でESA治療が望ましいという結果が出ているわけではない。ランダム化比較試験で心血管保護効果は有意ではなかったとしたものもある」と鶴屋氏。

 特に注視されたのは大規模試験TREAT(2009年)の結果だ。同試験では、2型糖尿病およびCKD患者4038例を対象に、ヘモグロビン値 13g/dL到達を目標としてESAを投与し、非投与群と比較した。死亡、冠動脈イベント、腎イベントのいずれの項目でもESA投与による有意なリスク低下を認めなかったばかりか、脳卒中発症リスクが1.92倍(P<0.001)、有意に高まることが示された。

 しかしその後行われたサブ解析から、ESAに抵抗性のある患者ではESA投与量が増加するほど死亡や心血管イベントリスクが上昇するが、抵抗性のない患者ではそれらのリスクはプラセボ群と変わらないことが判明している。
 

この記事を読んでいる人におすすめ