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日本心エコー図学会2011
HFpEFの早期診断や予後予測する新指標DWS
心エコー所見から算出可能、EFに代わる指標として期待

2011/05/23
編集部

阪大の坂田泰史氏

 左室駆出率(EF)は血行動態の増悪リスクを示す有用な指標であるが、EFが保たれているにもかかわらず心不全症状を呈する患者(HFpEF)も多く、こうした患者をどう早期診断してどのような治療を行うかが重要な課題になっている。

 阪大循環器内科の坂田泰史氏らは、拡張機能の主要な因子である心筋スティフネス(硬さ)を示す指標として、心エコー図から得られるパラメータに基づいた「Diastolic Wall StrainDWS」という概念を提唱してきた。

 このDWSがHFpEFの早期診断や予後予測の指標となる可能性を確認したと、第22回日本心エコー図学会学術集会(4月21~23日、開催地:鹿児島市)のシンポジウム「心エコードプラ指標の心不全治療への応用」で報告した。

 坂田氏らは、Dahl食塩感受性ラットを用いた高血圧性の拡張不全(HFpEF)のモデルにおける観察から、左室壁のスティフネスは代償性心肥大の時点では保たれているが、心不全へ移行する時期に急速に増悪することを見いだした。またHFpEFの患者の心エコー所見から、正常例ではあまり動かない心筋外膜が、HFpEFの患者では心室拡張時に外膜側方向へ大きく入りこむように動いていることに気づいた。

 この動きは「膜が柔らかければ圧力が吸収されるが、膜が固く弾性が損なわれていれば膜自体が圧力方向へ沈む」という「線形弾性理論」で説明できると考えられた。この概念に基づき、心エコー図から得られるパラメータを用いて坂田氏らが考案したのがDWSだ。

 拡張期の左室後壁心内膜側の移動距離と心外膜側の移動距離の差を、収縮末期左室後壁厚で割って求めるという指標で、具体的には(LVPWs-LVPWd)/LVPWsで算出する(LVPWs:収縮末期左室後壁厚、LVPWd:拡張末期左室後壁厚)。心筋が硬くなるほど、数値は小さくなる。

 動物実験において心筋スティフネス定数とDWSには有意な相関があることを確認。さらもヒトでも、心機能正常から代償性心肥大、HFpEFという心機能の段階的な悪化に伴ってDWSも有意低下することが明らかになり、DWSは心筋の硬さを反映していると考えられた。
 

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