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日本血管外科学会2011
PDA血管内治療、複雑病変では第1選択にならず
血管外科医による総合的な治療法の判断が必要と演者

2011/05/17
高橋 浩=メディカルライター

旭川医大の内田恒氏

 末梢動脈疾患(PAD)に対する血管内治療(EVT)が急増しており、重症度の高いTASC(Trans-Atlantic Inter-Society Consensus)II分類C/D病変に適用されるケースも見受けられる。

 こうした現状に対して旭川医大心臓血管外科の内田恒氏らは、第39回日本血管外科学会学術総会(4月20~22日、開催地:沖縄県宜野湾市)のシンポジウム「大腿動脈以下末梢動脈に対する治療戦略(血管内治療 vs Open.)で、「現時点でPDAへのEVTは、TASC II C/D病変の第1選択にはなり得ない」と指摘。血管外科医による総合的な治療法選択の判断が必要と強調した。

 PADに対する血行再建術としてわが国では、EVTがバイパス術よりも明らかに多く行われている。内田氏は冒頭、「衝撃的なデータ」として日本血管外科学会による最近の調査結果を紹介した。

 それによれば、大腿動脈領域の末梢血行再建術の内訳は、バイパス術の15%に対し、血管外科によるEVTが17%、循環器科または放射線科によるEVTは68%に及んだ。下腿動脈領域ではバイパス術が29%まで増えるが、血管外科によるEVTが14%、循環器科または放射線科によるEVTが57%だった。本来、バイパス術の適応であるべき症例にEVTが行われている可能性があると同氏は見る。

 内田氏らの施設では、大腿動脈以下のPADに対する治療指針の中で、EVTの適応を原則としてTASC II A/B病変に限定している。重症度の高いC/D病変に関しては、浅大腿動脈の限局性狭窄病変に、バイパス術とのハイブリッド治療としてEVTを行う。下腿3動脈には原則的にEVTを適用していない。

 今回、内田氏らは、最近3年間に血行再建術を行った鼠径靭帯以下のPAD 336例(男性250例、女性86例、平均年齢69.8歳)の成績を検討した。

 336例の病変部位は、大腿型14.5%、大腿・下腿型56.3%、下腿型29.2%。Fontaine分類は、II度36.3%、III度11.3%、IV度52.4%。併存症の頻度は、糖尿病49.1%、虚血性心疾患42.6%、慢性腎不全(維持透析)28.6%などだった。

 血行再建術の内訳は、バイパス術314例(93.5%)、EVT(PTA/ステント)15例(4.5%)、ハイブリッド治療7例(2.1%)。バイパス術群のTASC II 分類は全例C/D病変。うち233例(全336例の69.3%)は、下腿動脈以下だった。

 EVT群は15例中13例がA/B病変で、C病変、D病変は各1例。ハイブリッド治療群は全例D病変だった。すなわち、何らかの血行再建を行った全336例中、A/B病変は13例(3.9%)、EVT実施例も22例(6.5%)に過ぎなかったことになる。
 

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