日経メディカルのロゴ画像

New Insight from Basic Research
Marfanの大動脈瘤形成抑制に、なぜARBが有効か
TGFβシグナルを介した病態とARBの作用機序が明らかに

2011/04/21
古川 哲史=東京医科歯科大学

 マルファン症候群は、細胞外基質蛋白であるfibrillin 1の遺伝子(Fbn1)変異を原因とする遺伝性疾患であり、心血管系では大動脈瘤とこれに伴う大動脈弁閉鎖不全症を伴う。炎症性サイトカインの1つである形質転換増殖因子β(transforming growth factor β;TGFβ)が病態発現にかかわることが明らかとなり、TGFβの中和抗体や、シグナル伝達系でTGFβの上流に位置するアンジオテンシンII受容体1型(AT1R)活性のアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)による制御が治療法として有効であることが示唆されている。

 4月15日、Science誌にside-by-sideで発表された同一グループによる以下の2つの論文から、TGFβシグナルを介する病態発現メカニズムとARBの作用機序が明らかとなった。

(1)Noncanonical TGFβ signaling contributs to aortic aneurysm progression in Marfan syndrome mice.(Holm TM, et al. Science. 2011;332:358-61.)
(2)Angiotensin II type 2 receptor signaling attenuates aortic aneurysm in mice through ERK antagonism.(Habashi JP, et al. Science. 2011;332:361-5.)

 細胞外基質蛋白fibrillin 1はサイトカインTGFβを細胞外でトラップすることにより、TGFβシグナルの強度を調節する。fibrillin 1遺伝子であるFbn1変異によりTGFβシグナルが過剰になると、マルファン症候群の表現型がもたらされる。

 TGFβのシグナル伝達には、一般的なcanonical pathwayと、non-canonical pathwayとがある。canonical pathwayはsmadシグナルを介しており、受容体にTGFβが結合すると、受容体型smad(smad2あるいはsmad3)とコモンsmadであるsmad4が複合体を形成する。このsmad複合体が核内に移行し、ターゲット遺伝子であるconnective tissue growth factor (CTGF)やplasminogen activator inhibitor 1(PAI 1)の転写を活性化する(図1)。

この記事を読んでいる人におすすめ