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New Insight from Basic Research
食物と心疾患リスクをつなげる腸内細菌叢
動脈硬化性疾患患者の食事指導に新たな可能性

2011/04/13
古川 哲史=東京医科歯科大学

 我々の体の中には何兆もの病原性を持たない細菌が共生しており、これらの共生細菌は我々が生活していく上でさまざまな影響を与えていることが明らかとなってきた。中でも腸内細菌叢は、我々の栄養源摂取やエネルギー産生に大きな影響を与える。

 肥満者と非肥満者の腸内細菌叢プロフィールは異なっており、この違いはインスリン抵抗性や非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;NASH)の発症とも関係する。動脈硬化性心疾患では、食物中の飽和脂肪酸や高炭水化物がリスク因子と考えられており、腸内細菌叢とのかかわりが予想されるものの、その報告はこれまでなかった。

 4月7日にNature誌に発表された論文「Gut flora metabolism of phosphatidylcholine promotes cardiovascular disease.」(Wang Z, et al. Nature 2011;472:57-63)で、動脈硬化性心疾患における腸内細菌叢の関与が初めて報告された。

 同論文では、米国クリーブランド・クリニックにおいて心臓検査を行った患者から採取した血液サンプルを用いて、メタボローム解析を行った。メタボローム解析とは、網羅的に低分子代謝産物を質量分析計で測定する方法である。

 その解析データとその後3年間の心筋梗塞、脳卒中発症との関連を前向き調査により分析した結果、心筋梗塞および脳卒中発症患者で、3種類の代謝物、コリン(choline)、ベタイン(betaine)、トリメチルアミン N オキシド(trimethylamine N-oxide;TMAO)が有意に高値を示したという。

 コリン、ベタイン、TMAOは、いずれもリン脂質であるホスファチジルコリンの代謝物である。食物中のホスファチジルコリンが腸管内で加水分解されコリンとなり、コリンが腸内細菌叢により代謝されトリメチルアミンTMA)となり、吸収される(図1)。

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