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日本心臓血管外科学会2011
腹部大動脈瘤へのEVAR、IFU外症例への対応は
デバイスや手技の追加で治療成績はIFU内と同等

2011/04/08
軸丸 靖子=医療ライター

東京慈恵医大の宿澤孝太氏

 腹部大動脈瘤(AAA)への血管内治療EVAR)は、各ステントグラフトの添付文書に記載された実施基準(IFU;Instruction For Use)に準拠することが保険適用の条件になっている。しかし現実には、IFUから外れてもEVARを必要とする患者は多く、そうした症例へEVARを安全に施行するための手技の確立や保険適用の拡大が望まれている。

 第41回日本心臓血管外科学会(2月23~25日、開催地:千葉県浦安市)のパネルディスカッション「EVARにおけるIFUを検証する」では、パネリストらが自院での経験を報告、IFUに対する考えを述べた。

 東京慈恵医大では、ステントグラフトの保険適用(2008年)に先行して個人輸入の形でデバイスを入手し、AAAへのEVARを行ってきた(術式は2002年から保険適用)。同大血管外科の宿澤孝太氏はその期間における成績の分析から、「腎動脈起始部から瘤頭側端まで(proximal neck:PN)の長さがない、または径が30mm以上と広過ぎる症例を除けば、IFU外であっても術者の技術とデバイスの追加によって安全にEVARが施行できる」と述べた。

 現在、わが国で保険が適用される企業製のAAAステントグラフトは4種類。添付文書に記載されているIFUには若干の違いがあるが、PN径が広すぎる(32mm以上、Excluderは26mm以上)、PN長が短い(15mm未満、Talent AAAは10mm未満)、動脈瘤の長軸に対するPNの屈曲が強い(60度以上)――などの症例はIFU外の扱いだ。末梢側の腸骨動脈遠位固定部の形態についても細かくIFUが定められている。

 宿澤氏らは、ステントグラフトが保険適用される前の2006年7月~07年4月に慈恵医大病院でEVARを行った62症例を対象に、IFU内群(42例)、IFU外群(20例)に分けて成績を比較した。IFUから外れる理由の内訳は、PNの屈曲の強さが最も多く(11例)、腸骨動脈へのアクセス不良(4例)、末梢固定部位不良(4例)、PN長の短さ(1例)が続いた。

 IFU外症例への手術では、手技の工夫のほか内腸骨動脈コイル塞栓術の追加などを行った。その結果、IFU外群の平均手術時間は191分と、IFU内群の148分に比べ有意(P<0.05)に長くかかっていた。術中出血量もIFU外群で有意に多かった(IFU内群151mL vs. IFU外群259mL、P<0.05)。

 しかし、術後1500日の生存率はIFU内群94.8%、IFU外群91.7%と、有意な差を認めなかった。動脈瘤関連死は両群とも発生しておらず、IFU内群でエンドリークおよび追加インターベンションが2例ずつ発生したのみだった。

 宿澤氏は、PN長がまったくない、あるいはPN径が30mm以上と広過ぎる症例については、現在のところ追加できるデバイスに限りがあるためEVARは難しいものの、他のIFU外項目については安全にEVARが可能と結論。「工夫は必要だが、IFU内かIFU外かで中期成績に差はない」と述べた。
 

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