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日本心臓血管外科学会2011
心臓血管外科のキャリア、捨てても悔いなしが8割
同科勤務医を辞した医師へのアンケート結果

2011/03/22
軸丸 靖子=医療ライター

筑波記念病院の権重好氏

 苦労して積んだ心臓血管外科のキャリアのはずだが、捨てたことを悔いなしとした回答が77%に上り、後悔しているのは1人だけ。退職後の進路は施設の継承による開業が最も多く、転科後は年収が増えたとの回答が75%に上ったという。

 心臓血管外科勤務医を辞して開業や他の診療科への転科に踏み切った医師を対象としたアンケートから、現役の心臓血管外科医にとっては、ややがっかりするような結果がまとまった。

 第41回日本心臓血管外科学会学術総会(2月23~25日、開催地:千葉県浦安市)のシンポジウム「心臓血管外科の教育システムの構築――専門医の技術水準を担保するためには」で、筑波記念病院心臓血管外科の権重好氏が報告した。

 調査は2010年3月、心臓血管外科を辞めた医師154人に直接郵送する方法で行った。転科先や転科後の現状、転科の理由のほか、専門医資格や心臓外科修練施設集約化に関する考えなどを聞いた。

 回答が得られたのは56人(36%)で、心臓血管外科の従事年数は平均15.4年、辞めてから平均5.3年がたっていた。海外留学経験がある医師はこのうち18人だった。

 心臓血管外科を辞めた後の進路で最も多かったのは開業で34%。次いで循環器内科(20%)、血管外科(16%)、一般内科(14%)、保健所長などその他の進路(16%)となっていた。辞めた理由は、親からの施設の継承による開業が最も多く(18%)、より高い年収などの経済的事由(16%)、人間関係(13%)、興味の変化(12%)、心臓血管外科を続けることの不満感(7%)、身体的事由(7%)、年齢(6%)となっていた。その他も21%に上ったが、「心臓血管外科での将来に希望が持てない」とした人が半数(10%)存在した。

 転科後の新しい進路に満足しているかの問いでは、満足しているとした回答が77%で、後悔しているとしたのは2%(1人)のみ。転科後は収入が増えたとの回答が75%と4分の3を占め、減ったという回答は9%に過ぎなかった。

 56人中35人が取得していた心臓血管外科専門医の資格については、5年ごとの更新を今後行うとした人は14%にとどまり、63%が「更新したいが現実的には難しい」と回答した。転科後は、49%の医師が循環器専門医など他科の専門医を取得しており、16%がこれから取得する予定とした。

 一方、専門医制度の今後のあり方については、社会的地位向上のため取得をより厳しくしたり、上級医制度を設けるべきとする考えが8割以上を占めたほか、専門医を取るのが難しそうな医師については、「転科すべき」(48%)、「第一線を退いて病棟業務や術後管理に専念すべき」(17%)と厳しい意見が多かった。

 心臓血管外科手術の質向上や若手医師教育のため、日本心臓血管外科学会などが進めている施設集約化については、77%が「賛成」と回答。ただ、集約化によって労働環境が改善されたかについては、過半数が「改善されない」との考えを示し、労働環境改善に学会が貢献しているかの問いにも、77%が「貢献していない」とした。
 

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