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糖尿病学の進歩2011
積極降圧が腎症の発症・進展予防につながる
議論はあるものの、現行ガイドラインでは130/80mmHg未満が目標

2011/03/16
編集部

埼玉医大の片山茂裕氏

 糖尿病患者における高血圧は心血管疾患リスクを高めるだけでなく、糖尿病腎症の進展を加速させることから、降圧治療の重要性が近年改めて指摘されている。

 第45回糖尿病学の進歩(2月18~19日、開催地:福岡市)では、埼玉医大病院長の片山茂裕氏がその治療戦略を解説。「糖尿病患者の降圧目標には議論もあるが、血糖と異なり血圧では厳格管理による悪い結果は出ていない。目標値は130/80mmHg、尿蛋白がある場合は125/75mmHg未満とし、必要であれば降圧薬を上手に併用して、糖尿病性腎症の寛解・進展予防を目指してほしい」と強調した。

 わが国の透析導入患者は年々増え続け、現在約26万人にのぼる。導入理由の第1位は糖尿病腎症で、2007年には新規導入者の43.5%を糖尿病患者が占めた。英国のUKPDS 64では、年率2~3%で糖尿病腎症のステージが進展すると共に、主に心血管疾患による死亡率は正常アルブミン尿1.4%、微量アルブミン尿3.0%、顕性蛋白尿4.6%、腎不全・透析19.2%と、ステージが進展するほど相乗的に増大する。このような心腎連関が明確になってきたことで、腎症の予防あるいは進展の抑制が喫緊の課題として浮かび上がった。

 そこに希望を示したのが、わが国で行われている大規模前向き観察研究JDCSにおける、糖尿病腎症に関する解析結果だ。生活習慣指導を中心とした強化治療によって、2型糖尿病患者の顕性腎症発症率は6.67/1000人・年(年間0.67%)ときわめて低く抑えられるだけでなく、軽度な微量アルブミン尿の段階であれば3割の患者が正常値に戻ることが示された(Katayama S, et al. Diabetologia. 2011 Feb 1;DOI 10.1007/s00125-010-2025-0)。

 また、顕性腎症への進展リスクは血糖の管理が悪い患者ほど高く(HbA1c 7%未満群に比較し、7~9%群では2.72倍、9.0%以上群で5.81倍)、収縮期血圧が高い患者ほど高い(120mmHg未満の群に比べ121~140mmHg群では2.31倍、141mmHg以上群で3.54倍)ことも明らかになった。

 片山氏は「微量アルブミン尿から正常アルブミン尿に戻る人が3割もいたことは、今後の腎症治療に大きな意義を有してくる」とこの結果を解説。「2型糖尿病患者では、早期に蛋白尿を診断し、軽度のうちに生活習慣の改善や良好な血糖コントロール、厳格な血圧コントロールを行うことが重要だ。それが蛋白尿患者の減少、ひいては透析導入患者の減少につながるだろう」と指摘した。

 では、2型糖尿病患者の腎症進展予防には、どの時点でどのように介入するのが望ましいのか。

 顕性蛋白尿から腎不全への進展予防については、既にアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を用いたRENAAL試験やIDNT試験、ORIENT試験で進展遅延や腎保護効果が確認されている。より早い段階である微量アルブミン尿から蛋白尿への進展予防についても、やはりARBを用いた複数の介入試験で予防効果が明らかにされている。

 ただ、尿中アルブミンが正常な段階からの腎症発症予防となると、これまではACE阻害薬による小規模な試験でしか予防効果は認められていなかった。大規模試験ではカンデサルタンによる糖尿病網膜症の発症・進展予防効果を検証したDIRECT試験において、2次エンドポイントとして微量アルブミン尿の出現予防効果を検討したが、有意な効果は認められなかった。

 そのなかで、09年の米国腎臓学会で発表されたROADMAP試験は、ARBとして初めて微量アルブミン尿の出現予防効果を確認した結果となった。尿中アルブミンが正常の4447例をオルメサルタン群とプラセボ群に割り付け、4年間追跡した結果、オルメサルタン群での微量アルブミン尿出現は23%、有意に抑制されたという報告だ(Haller H, et al. N Engl J Med. 2011;364:907-17.)。

 「ARBを上手に使って血圧をコントロールすることで、腎症の進展だけでなく発症予防につなげられることが明らかになってきた」と片山氏。
 

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