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日本成人病(生活習慣病)学会2011
健診・ドックでの高血糖・脂質異常例をどう扱うか
HbA1c値によって紹介先を変えることも一案

2011/02/01
軸丸 靖子=医療ライター

慈恵医大の西村理明氏

 企業の健康診断人間ドックで認められた高血糖脂質異常例は、どのレベルから専門医に紹介すべきか――。第45回日本成人病(生活習慣病)学会学術集会(1月15~16日、開催地:東京都千代田区)のシンポジウム「職域における生活習慣病の診断と管理―ドック健診と医療機関の連携」では、心血管疾患ハイリスク例の扱いについて、健診側と専門医側の連携のあり方について議論された。

 この中で糖尿病専門医の立場から発言した慈恵医大糖尿病・代謝・内分泌内科の西村理明氏は、糖尿病患者数の急増を踏まえ、「すべて専門医に紹介するのではなく、HbA1cが8%以上ならば専門医、それ未満ならかかりつけ医といった連携が考えられる」と、かかりつけ医活用の必要性を指摘した。

 従来、わが国の糖尿病の診断基準は日を変えた2回の検査を原則としていたが、2010年にHbA1c(JDS値6.1%以上)と血糖値(空腹時126mg/dL以上、経口ブドウ糖負荷試験[OGTT]2時間値200mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上のいずれか)が共に基準以上であれば、1回の検査で診断できるよう改訂された。

 検査を人間ドックで行う場合、煩雑なOGTTは避け、空腹時血糖とHbA1cの2つとすることが多くなるが、はたしてOGTTを行わなくても問題はないのか?

 「OGTTはやはり重要な指標」とする西村氏が示すのは、DECODE試験や舟形町研究の結果だ。DECODE試験は、空腹時血糖では一定値を超えるまで心血管疾患死亡率との関連は見られないのに対し、OGTTはより低値から直線的に死亡率上昇と相関することを示した。舟形町研究もDECODE同様、OGTTが空腹時血糖より鋭敏な指標になることを確認したものだ。

 実際、持続血糖モニタリングシステムで測定してみると、空腹時血糖150mg/dL程度で食後血糖が300mg/dLを超えていたり、HbA1cが6%前半でも空腹時血糖の上昇はわずかしかなかったりと、HbA1cや空腹時血糖だけでは線引きしにくいケースがあることが分かるという。「メタボリックシンドロームのスクリーニングであれば、空腹時血糖が100~110mg/dL程度でも意義がある。だが空腹時血糖とHbA1cだけで糖尿病を診断するのは、実際難しい」と西村氏。

 「米国のようにHbA1cのみで診断する方法には、さらに疑念がある」(西村氏)。空腹時血糖126mg/dLの患者群でHbA1cを見ると、中央値は6%付近にあるが、その分布は4%後半から8%まで幅があるためだ。HbA1cは正常範囲でもOGTTで耐糖能異常を認める患者も少なくない。「アジア人種は特に、空腹時血糖よりOGTTで糖尿病と診断される人が多い。OGTTを行う必要性はやはり高い」と西村氏は強調する。

 とはいえ、人間ドック受診者全員にOGTTを行うのは無理がある。そこで西村氏が提案するのが、欧州などで広く使われている糖尿病リスクスコアの応用だ。

「年齢、体重指数(BMI)、高血圧、糖尿病の家族歴の4つは、大半のリスクスコアで用いられる糖尿病の高リスク因子だ。わが国の人間ドックでも、これら4因子がある患者では、HbA1cが高くなくてもOGTTを行うようにすれば、高リスク患者を見逃さずにすむ」と西村氏。

 健診や人間ドックで糖尿病や高血糖が認められた場合、その後どのような医療機関で精査や管理を行うかが課題になる。糖尿病患者が急増している現状では、専門医への紹介にも限度があるためだ。

西村氏は私案と断りつつも、「HbA1c8%以上の患者は専門医、それ未満ならばかかりつけ医へ紹介し、血糖管理や栄養指導などを行うのがよいのではないか」と提案。今後は、かかりつけ医による糖尿病診療の“機能向上”が鍵になると述べた。
 

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