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日本冠疾患学会2010
トラネキサム酸の局所散布で術後出血量が6割減
off-pump CABGの胸骨閉鎖時に同薬1gを縦隔内に散布

2011/01/27
高橋 浩=メディカルライター

豊橋ハートセンターの青木雅一氏

 抗血小板薬継続下での冠動脈バイパス術(CABG)実施例の増加などを背景に、縦隔内止血に難渋する症例がときに問題となる。豊橋ハートセンター心臓血管外科の青木雅一氏らは、off-pump CABGの閉胸時にトラネキサム酸を縦隔内に散布することで術後出血量が約6割に減少したと、第24回日本冠疾患学会学術集会(12月10~11日、開催地:東京都千代田区)で発表した。

 わが国では現在、CABG初回待機手術の3分の2がoff-pump下で行われている。off-pump CABGは、心嚢内操作やヘパリン投与量が少なくてすむため、術後出血が起こりにくいとされる。しかし近年、抗血小板薬投与による出血リスクに留意すべき症例が増えている。

 同院ではほぼ全例にoff-pump CABGを実施しているが、術前から抗血小板薬が投与されている場合は基本的に継続したまま手術に入る。また、術前に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けている症例、特に薬剤溶出ステント(DES)留置例が急増しており、複数の抗血小板薬投与を中止することなくCABGを実施するケースも少なくない。さらに、高齢者や透析患者など、出血リスクの高いCABG症例も増えている。このため、ときに縦隔内の止血に難渋することがある。

 そこで、止血の目的でトラネキサム酸の局所散布を試みたところ有効との印象を受けたことから、トラネキサム酸使用群の成績を非使用群と比較検討した。投与方法は、胸骨閉鎖の直前にトラネキサム酸1g(10mL原液)を縦隔内に散布するというもの。皮膚閉鎖までの10分程度、縦隔のドレーンをクランプして、トラネキサム酸を浸透させる。

 トラネキサム酸は、止血や抗炎症作用を有するため、練り歯磨きなどに添加されているほか、医薬品としては主に白血病患者などの出血や術中・後の異常出血などに対して内服で用いられている。また心臓外科領域でも、術後出血を軽減するために静脈内投与で使用することは珍しくない。しかし、局所投与は心臓外科領域ではほとんど行われていない。人工膝関節置換術など、ごく一部で報告が見られるのみだ。
 

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