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日本冠疾患学会2010
CABGと下肢バイパスの同時手術はリスクとならず
10年生存率や心血管イベント回避率は有意悪化せず

2011/01/24
軸丸 靖子=医療ライター

名古屋共立病院の熊田佳孝氏

 冠動脈疾患(CAD)に末梢動脈疾患(PAD)を合併し、心臓と下肢のどちらも手術を待てない症例では、やむを得ず、冠動脈バイパス術(CABG)と下肢バイパス術が同時に施行されることがある。

 名古屋共立病院心臓血管外科の熊田佳孝氏は、こうした“超重症例”の長期予後について分析。10年間の心血管イベント回避率や生存率は同時手術群とそれ以外の群との間に差はなく、「CABGと下肢バイパスの同時手術がリスクになるとは考えられない」と、第24回日本冠疾患学会(2010年12月10~11日、開催地:東京都千代田区)の合同シンポジウム「PADを合併した冠動脈疾患の治療を考える」で発表した。

 CADとPADの合併例の治療は難しく、予後が悪いことが知られる。Fontaine(FT)分類でII度以上の症例であれば、まず心臓を優先し、その後改めて下肢の手術を行うことが多いが、PADの感染リスクはCAD治療の障害になる。さらに、下肢切断を考えなければならないような重症虚血肢(CLI)症例では、心機能の回復を待てない状況もある。

 熊田氏は、PAD合併CABG症例の長期予後をみるため、2000~09年に自院で待機的CABGを施行した403例(男性73.4%、平均年齢68歳)を、PADの既往者または下肢バイパス術をCABGと同時に行った98例(PAD群)と、それ以外の群(非PAD群、305例)に分け、比較検討した。

 PAD群は非PAD群に比べ、糖尿病(PAD群:78.6% vs. 非PAD群:57.7%)、透析(同:63.2% vs. 32.1%)が有意に多く、左室駆出率(EF)が有意に低かった(同:51.5% vs. 55.7%)。一方、年齢、性別、高血圧、脂質異常症、脳卒中、多枝病変、左冠動脈主幹部病変などには、有意な差はなかった。CABGのグラフト数やオフポンプ率も両群で同等だった。

 術後の経過では、院内死亡率がPAD群3例(3.1%)、非PAD群4例(1.3%)と、有意ではなかったもののPAD群で高い傾向にあった。しかし10年間の心イベント回避率を見ると、PAD群69.6%、非PAD群56.3%と有意差はなかった(P=0.67)。

 ただ、下肢や脳を含めた心血管イベントでは、10年間のイベント回避率がPAD群29.0%、非PAD群45.6%と、PAD群で有意に低下していた(P=0.0001)。生存率についても、PAD群は56.4%と10年で4割以上が死亡しており、非PAD群(75.9%)よりも有意に予後不良だった(P=0.0009)。

 この点について熊田氏は、「PAD群ではCABG施行後1年以内にPADに対するバイパス手術やPTAを行う症例が多く、そのころにイベントが発生しやすい」と指摘した。
 

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