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日本冠疾患学会2010
on-pump CABG周術期のhANP投与で長期予後改善
ハイリスク症例の術後早期および遠隔期のMACEを抑制

2011/01/07
高橋 浩=メディカルライター

日大の瀬在明氏

 人工心肺下に行うハイリスク症例の冠動脈バイパス術(CABG)の周術期に、低用量のヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドhANP)製剤を持続静注することで、術後早期から10年以上経過した遠隔期まで、脳卒中を含む主要心脳血管イベント(MACE)を有意に抑制できることが分かった。

 二重盲検ランダム化プラセボ対照試験NU-HIT(Nihon University Working Group Study of Low-dose Human ANP Infusion Therapy during Cardiac Surgery)trialの成績で、日大心臓血管・呼吸器・総合外科の瀬在明氏が第24回日本冠疾患学会学術集会(2010年12月10~11日、開催地:東京都千代田区)のシンポジウム「ハイリスク症例に対する人工心肺下CABGの工夫」で発表した。

 さらに一般演題で同科の木村玄氏が、NU-HIT trialの新たな検討からhANP投与により慢性腎臓病(CKD)合併CABG症例でも、長期にわたって心イベント・透析導入を有意に抑制できることを明らかにした。

 わが国で開発されたhANP製剤(一般名カルペリチド)は、ナトリウム利尿作用とともに、血管拡張作用、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系や交感神経系などのホルモン分泌抑制作用など、多彩な作用を持つ。急性心不全の血行動態を改善することから急性心不全の治療薬として広く使用されているが、急性心筋梗塞(AMI)に対する心保護作用にも期待が寄せられている。

 一方、人工心肺下の手術では、RAA系や交感神経系などのホルモン分泌亢進、尿量減少、サードスペースへの水分貯留といった問題が生じる。同科では、CABGを一貫して人工心肺下で行っているが、CABGを含む心臓手術時の人工心肺による悪影響を排除する手段の1つとして、hANP投与に早くから着目。1997年よりNU-HIT trialをスタートさせ、人工心肺下の各種心血管手術における効果を検討してきた。

 対象症例数は全体で1300例近くに及ぶ。hANPの投与方法は、体外循環開始時から、通常用量の5分の1である0.02μg/kg/minを経口薬開始まで、経口薬開始後は0.01μg/kg/minを持続静注し、経口薬開始12時間後に中止するというもの。

 CABG症例40例を対象とした検討(2000年報告)では、RAA系の有意な抑制が認められた。緊急CABGを行ったAMI症例124例を対象とした検討(07年報告)では、心不全を中心とする心イベント発生率が約2年後まで有意に抑制される成績が得られた。低心機能(左室駆出率<35%)のCABG症例133例を対象とした検討(10年報告)では、有意な心イベント抑制が約12年後まで認められた。

 瀬在氏が今回報告したのは、ハイリスクCABG症例を対象とした検討結果だ。薬剤溶出ステント(DES)の普及に伴い、低心機能、CKDなどを有するハイリスクCABG症例が明らかに増加している。今回の検討ではEuro-score 6点以上をハイリスク症例とし、これに当てはまる人工心肺下CABG実施例358例をhANP群とプラセボ群にランダムに割り付けた(オフポンプ症例などを除き、hANP群170例、プラセボ群171例)。

 両群の患者背景に有意差はなく、どちらもAMIが20%弱、緊急CABGがほぼ半数、術前IABP挿入が約30%、CKDが40%強認められた。平均年齢、Euro-score、バイパス本数、観察期間は2群で有意差がなく、それぞれおよそ71歳、9点、3本、5.3年だった。
 

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