
韓国Gachon University Gil HospitalのKwang Koh Koh氏
プラバスタチンとロスバスタチンはどちらも水溶性スタチンに分類されるが、高コレステロール血症患者における代謝への作用は異なり、プラバスタチンでは血漿アディポネクチン値やインスリン感受性を有意に増加させ、インスリン値とHbA1c値は有意に低下させることが分かった。
第83回米国心臓協会・学術集会(AHA2010、11月13~17日、開催地:シカゴ)のRobert Levy Memorial Lectureで、韓国Gachon University Gil HospitalのKwang Koh Koh氏が報告した。
Koh氏は既に、高コレステロール血症患者においてシンバスタチンが血漿アディポネクチン値とインスリン感受性を有意に低下させること(Koh KK, et al. Diabetes Care. 2008;31:776-82)、アトルバスタチンは高コレステロール血症患者においてHbA1cとインスリン抵抗性を有意に増加させること(Koh KK, et al. J Am Coll Cardiol. 2010;55:1209-16)、シンバスタチンと異なりプラバスタチンは血漿アディポネクチン値とンスリン感受性を有意に増加させること(Koh KK, et al. Atherosclerosis. 2009;204:483-90)などを報告している。
一方、スタチンを用いたランダム化比較試験(RCT)のメタ解析(13試験)で、スタチン(アトルバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、lovastatin)が糖尿病発症を9%有意に増加させたとの報告がある。各スタチンによる糖尿病発症に有意差はないものの、その数字にはバラツキが認められた(Sattar N, et al. Lancet. 2010;375:735-42)。
非糖尿病患者を対象にインスリン感受性に対するスタチンの影響を調べたメタ解析(16試験)では、スタチン全体では対照群と有意差はなかったものの、プラバスタチンを用いた3試験では有意に改善していたが、シンバスタチンを用いた5試験では有意に悪化し、アトルバスタチンとロスバスタチンを用いた試験(それぞれ5試験)では有意差はなかった(Baker WL, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2010;87:98-107)。
スタチンごとに異なるこうしたデータを踏まえて同氏は、同じ水溶性スタチンであるロスバスタチンとプラバスタチンに焦点を当て、「高コレステロール血症患者において、ロスバスタチンとプラバスタチンは異なった代謝作用を有する可能性がある」という仮説を立て、これをRCT(単盲検法・プラセボ対照・並行試験)で検証した。