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日本高血圧学会2010
エンドセリン1は高血圧発症の予測因子に
ホモシステイン、レムナント様リポ蛋白コレステロールも同様、田主丸研究

2010/11/02
宇田川 久美子=メディカルライター

久留米大の足達寿氏

 1958(昭和33)年に福岡県田主丸町(現・久留米市田主丸町)で開始された田主丸研究は、わが国で最も歴史のある循環器コホート研究だ。

 第33回日本高血圧学会総会(10月15~17日、開催地:福岡市)のシンポジウム「わが国の高血圧の代表的疫学コホートとその成果」で久留米大地域医療連携講座の足達寿氏は、昨年50周年の節目を迎えた田主丸研究の概要と冠危険因子の経年的変遷について説明するとともに、近年明らかになった新たな冠危険因子について報告した。

 田主丸研究は、欧州5カ国と米国、日本による世界7カ国共同研究の一環として開始された。この共同研究は、1956年に当時九大助教授だった木村登氏(後に久留米大第三内科初代教授)が、九州の住民の心血管イベント発生率は米国ミネソタ州住民の10分の1程度であることを報告したことに端を発する。

 わが国のコホートとして選ばれた地域が、農村地区のモデルとなった田主丸町と漁村地区のモデルとなった熊本県牛深市(現・天草市の一部)だった

 世界7カ国共同研究は、栄養摂取と疾患との関連を検討する栄養疫学だった。そのため初期の研究から、わが国の食事は総カロリーに占める脂肪の割合や脂肪酸構成のバランスがよいといった特徴が報告され、「驚異的な冠動脈疾患イベント発生率の低さ」の理由の1つが明らかになった。

 しかし、この50年間で日本人の生活習慣は大きく変化した。研究開始時の58年と直近の09年について、田主丸町の40~64歳の男性で比較すると、米の摂取量は約4割に激減した一方、肉類や乳製品の摂取量は約7倍に増加した。それに伴い総コレステロールは152.5mg/dLから207.7mg/dLへ、体重指数(BMI)も同様に21.7kg/m2から24.1kg/m2へと増加した。

 また、高血圧治療を受けている人の割合は、3%からほぼ10倍の33.4%にまで増加した。3人に1人に降圧薬が入った状態で測定された血圧ということになるが、収縮期血圧こそ50年前と同等(132.9mmHg→132.0mmHg)だったものの、拡張期血圧は73.5mmHgから86.2mmHgへと上昇していた。

 一方で、喫煙率は68.5%から37.6%へと低下。これらをまとめると、かつての「日本型」の冠危険因子(身体因子:やせ型、栄養因子:低脂肪・低蛋白・高炭水化物・高塩分食、社会的背景:労働過剰・喫煙・飲酒)から、高脂肪・高蛋白食と運動不足に基づく肥満や高血圧、高コレステロール血症、糖尿病といった欧米型冠危険因子への移行が確実に進んでいることが浮き彫りになった。
 

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