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日本肥満学会2010
肥満症の診断基準、来春の改訂へ向け議論(2)
わが国でも一歩踏み込んだ高度肥満対策が必要

2010/10/21
後藤 恭子=医療ライター

大分大の加隈哲也氏

 高度肥満例はいまだ国内では少なく、各年代におけるBMI 30以上の肥満者の占める割合はおおむね3~5%と、米国と比べると10分の1未満にとどまる。しかし、これらの高度肥満例に対しては内科治療のみでは限界があり、外科治療の対象となる症例が少なくない。こうした状況から、内科治療をベースとした肥満治療だけでなく、独立した病態としての高度肥満の診断基準と治療法の確立を求める意見が出始めた。

高度肥満例の合併症、質的異常が量的異常を上回る

 第31回日本肥満学会学術集会(10月1日~2日、開催地:前橋市)で行われたシンポジウム「新しい肥満症診断基準」の中で大分大内分泌糖尿病内科の加隈哲也氏は、同科に肥満加療目的で入院したBMI 35以上の患者130例(男性62例、女性68例、平均34歳、平均BMI値40以上)を対象に、肥満に伴う健康障害について調査した。

 その結果、脂肪細胞の量的異常だけでなく質的異常に分類される合併症を伴っている患者が56%に上った。さらに、「質的異常がなく量的異常のみ」という症例はわずか3%だった一方で、「量的異常がなく質的異常のみ」という症例は約40%と、高度肥満例では量的異常よりも質的異常による合併症を持つ患者が多いことが明らかになった。

 なお、合併症の内訳は、脂肪肝が8割、糖質・代謝異常が6割、約45%程度が高血圧だった。

 これらの症例に対して行動療法を中心とする入院治療を約1カ月実施した結果、約10kgの減量が得られた(入院時体重の8.6%減)。生活習慣病(耐糖能異常・2型糖尿病、脂質代謝異常、高血圧)も有意な改善を認めたが、加隈氏によると、患者のほとんどが服薬していない、あるいは極めて少ない服薬量だったという。

 加隈氏は、「現在の診断基準では、量的異常やBMI 30以上の高度肥満例に対しては5~10%減を目安に減量目標が設定され、当院でもそのような症例に対しては超低エネルギー食を用いて10%減を目指している。だが実際は高度肥満例でも質的異常の症例が多く、そのような場合は5%程度の減量でも十分との印象を得た」との見方を提示。「日本人の高度肥満例の特徴にもう少し踏み込んだ診断基準の検討が必要ではないか」と指摘した。

 また、こうした高度肥満症治療として現在外科治療が盛んに行われていることにも言及し、「現在の診断基準には外科治療の介入が示されていないので、外科治療の位置づけを明確にするという視点で高度肥満症の診断基準を検討する必要もあるのではないか」と述べた。
 

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