
大阪府済生会千里病院の伊藤賀敏氏
院外心停止で救急搬送されてきた症例に対しては、状態に応じて経皮的心肺補助療法(PCPS)や脳低温療法、再還流療法といった高度な集中治療を行うが、救命できても脳蘇生できない例も経験される。
循環器救急患者の脳神経学的予後の予測指標として、脳内局所酸素飽和度(rSO2)が有用であり、rSO2が25%以下の症例では予後不良であることが分かった。大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター 心血管内治療室の伊藤賀敏氏らが、第58回日本心臓病学会学術集会(9月17~19日、開催地:東京都千代田区)のシンポジウム「循環器救急医療の進歩」で発表した。
脳蘇生を予測するバイオマーカーとしてこれまでに、アンモニアやpH、塩基過剰(BE)、血中乳酸濃度などが報告されているが、感度、特異度はいずれも高いとはいえない。それ以上に、採血して測定結果が出るまでに時間がかかるため、救命救急の現場では使いにくいという限界がある。
これに対しrSO2は、心臓血管外科手術中のモニタリングによって、脳神経学的予後を予測できることが近年知られてきた新しい指標だ。近赤外線を用いて前頭葉の局所的な酸素飽和度を計測するもので、瞬時かつ侵襲なく行えるのがメリット。
今回伊藤氏らは、rSO2を用いて院外心停止症例の脳神経学的予後の予測が可能か、自験例に基づいた検討を行った。対象症例は、院外心停止で搬送されてきた153例中、来院時にまだ心停止の状態だった82例。rSO2の測定は搬入後3分以内とし、同時にほかのバイオマーカーも測定した。
82例の転帰は、脳蘇生良好が13例、不良が69例だった。良好群の搬入時rSO2は平均51.8%で、不良群の平均24.2%と比較して有意(P<0.001)に高かった。