日経メディカルのロゴ画像

日本蘇生学会2010
病院前蘇生時の胸骨圧迫、用手法では状況により差
自動装置では安定した実施が可能・生存退院率悪化なども見られず

2010/10/05
高橋 浩=メディカルライター

 病院前蘇生では、できるだけ早期から、十分な強さと速度の胸骨圧迫を絶え間なく行うことが要求される。しかし、訓練を受けた救急隊員でも場所や状況により、質の高い胸骨圧迫を維持できないことがある。

 日本蘇生学会第29回大会(9月10~11日、開催地:宇都宮市)では、患者宅の階段昇降時やストレッチャー移動時に救急隊員の6割以上で十分な深さの胸骨圧迫が行えなかったことが報告された。また、常に安定した胸骨圧迫を行う上で、自動心肺蘇生装置であるAutopulse(後述)が有用と考えられるデータも明らかになった。

 わが国の住宅は概して狭く、救急患者の搬送に苦慮することが多い。例えば、心肺停止患者を自宅2階から1階に移動させる際、階段が狭いため、予想以上に時間がかかってしまうことがある。その間は用手的胸骨圧迫が行えず、血流停止時間が長くなってしまう。

 では、胸骨圧迫の質はどのような状況で低下するのか。これを明らかにするため聖マリア病院救急科の爲広一仁氏らは、蘇生訓練用成人人形を用いて仮想の患者宅から病院への搬送する場面を7種類設定。救急救命士を含む救急隊員30人に、それぞれの場面で用手的またはAutopulseによる胸骨圧迫を30回ずつ行ってもらい、各場面における胸骨圧迫の深さを比較検討した。

 一般に胸骨圧迫の深さは、成人で35~50mmとされているが、今回の検討では、深さの平均が7場面中3場面、すなわち患者宅の階段下り(27.2mm)、階段上り(32.1mm)、患者宅から救急車へのストレッチャー移動中(30.8mm)で、35mmに達していなかった。特に階段下りでは、極端に浅くなることがわかった。

 その他の場面、すなわち患者宅の床の上(51.7mm)、走行中の救急車内(40.2mm)、救急車から病院ER室移動中(35.0mm)、およびER室のベッド上(43.5mm)では、いずれも適切な深さの胸骨圧迫が行われていた。

 深さの平均が35mmに達していなかった階段下り、階段上り、患者宅から救急車へのストレッチャー移動中では、35mm未満だった救急隊員の割合が、それぞれ76.7%、60.0%、66.7%と、3場面とも6割以上に及んだ。
 

この記事を読んでいる人におすすめ