
オランダ・グローニンゲン大学のAdriaan A. Voors氏
基礎研究や小規模の臨床試験では、心筋虚血に対するエリスロポエチン(EPO)製剤による保護効果の報告が増えている。しかし欧州心臓学会(ESC2010、8月28~9月1日、開催地:スウェーデン・ストックホルム)でAdriaan A. Voors氏(グローニンゲン大学、オランダ)が発表した大規模臨床試験HEBE IIIでは、そのような心保護効果は確認できなかった。HEBE IIIは、EPO製剤の心保護効果を検討する試験としては最大級という触れ込みで、その結果が注目されていた。
HEBE III試験の対象者は、ST上昇型心筋梗塞で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)に成功した529例。EPO製剤による治療の既往がある症例は除外した。PCI後3時間以内にエポエチン・アルファ6万単位静注群(263例)と対照群(268例)にランダムに割り付け、非盲検下で6週間追跡した(PROBE法)。
試験開始時の背景因子は、平均年齢61歳、78%が男性だった。血中ヘモグロビン濃度は14g/dL、ヘマトクリットは41%、血清クレアチニン値は0.86mg/dL、収縮期血圧は128mmHg。いずれもオランダにおけるST上昇型心筋梗塞患者に典型的な値だという。
責任病変は、左前下行枝が40%、右冠動脈が43%だった。