
三井記念病院総合健診センターの石坂裕子氏
人間ドック健診の腹部超音波検査で腹部血管の観察も行うようにしたところ、受診者約9500人の0.45%に、腹部大動脈瘤または瘤状拡張の所見が認められたという。第51回日本人間ドック学会学術大会(8月26~27日、開催地:旭川市)で、三井記念病院総合健診センターの石坂裕子氏らが報告した。
腹部大動脈瘤は動脈瘤の中で最も多い疾患で、破裂するまでは特異的な症状がない上、破裂による死亡率は高い。他疾患の腹部画像検査で偶然見付かることもあるが、意図的に破裂前に発見するには、健診に頼らざるを得ない。最近は、人間ドック健診の腹部超音波検査において、腹部動脈瘤の検出を目的とした観察を行う施設が増えつつある。
同センターでも2009年5月から、人間ドック健診の腹部超音波検査において、腹部大動脈瘤の発見を目的とした腹部血管の観察を開始した。今回は、2010年3月31日までの受診者9447人(男性5639人、女性3808人)の結果をまとめた。
腹部超音波検査で、大動脈壁一部の全周性、または局所が拡張した状態を腹部血管所見としたところ、43人(0.45%)で腹部血管所見(大動脈瘤または瘤状拡張)が認められた。43人の年齢は42~86歳だったが、大半は高齢者だった。性別は9割に相当する39人が男性。腹部血管所見の頻度は男性が0.4%で、女性に比べて10倍高かった。
血管所見の部位は、腹部大動脈が41人、上腸間膜動脈および脾動脈が各1人。腹部大動脈の直径は、40mm以上19%、30~40mmが37%、30mm未満が44%だった。
健診後の経過を見ると、43人中16人は既に専門医を受診しているか、健診後に受診した。うち3人が1年以内に専門医の治療を受け、7人が経過観察となった。他の受診者は翌年の人間ドック健診で、再度観察を行うことになった。