
英国セントジョージ・ロンドン大学のJohn Camm氏
スウェーデン・ストックホルムで開催された欧州心臓学会(ESC2010、8月28~9月1日)では、学会会期中に公表された新たな心房細動(AF)ガイドラインを取り上げるセッションがいくつか組まれた。
ESCのAFガイドラインは、米国心臓協会(AHA)、米国心臓学会(ACC)と共同作成したものが2001年、次いで06年に公表されているが、今回は初めてESC単独での公表となった。
本稿ではガイドライン筆頭著者であるJohn Camm氏(英国セントジョージ・ロンドン大学)の講演などから、その概略を紹介しよう。
本ガイドラインの特徴は、広く一般医を対象としている点だ。執筆グループにも、心臓専門医以外が参加しているという。その結果、AFの鑑別などは心電図検査など通常の診察室で行い得るものに限り、また、経過観察中の細かい留意事項も明記された。
治療に関しては、「症状軽減」と「合併症予防」が主目的であることが新たに記された。
合併症予防の観点から最も重要なのは、いうまでもなく脳塞栓症である。今回のガイドラインでは、06年版が基本的に全AF患者に抗血栓療法を推奨していたのとは異なり、同療法でメリットが得られる患者を特定する方針に変更された。そのため、塞栓症発症リスクと抗血栓療法による出血リスクを評価する、新たなスコアが導入された。