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日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2010)
PCI後の抗血小板療法、その望ましい戦略は(2)
個々の患者で抗血小板活性を測定する方向性も

2010/09/14
軸丸 靖子=医療ライター

三重大大学院の西川政勝氏

 近い将来、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)前後やフォローアップに際して患者ごとに血小板機能を測定、その結果に基づいて抗血小板療法を決定するようになるのかもしれない。第19回日本心血管インターベンション治療学会(8月22~24日、開催地:仙台市)のシンポジウム「抗血小板治療を考える」で三重大大学院の西川政勝氏は、PCI患者の血小板機能モニタリングの可能性について解説した。

 本シンポジウムでは倉敷中央病院の門田一繁氏、名古屋第二赤十字病院の平山治雄氏らも、患者が持つステント血栓症のリスクに応じた個別化医療の必要性を指摘している(関連記事)。西川氏はさらに一歩進めて、ベッドサイドで血小板機能を評価して抗血小板療法に反映させる考え方を紹介した。

 PCI患者の血小板機能モニタリングが同患者の予後と関連するかについて、これまで明確なエビデンスはなかった。だが今年になりオランダの研究グループから、抗血小板薬を使っているにもかかわらず血小板凝集能が十分抑制されていない患者は予後が不良であるとの研究結果が報告され、抗血小板療法の評価手段の1つとしてモニタリングの意義が注目されるようになった。

 その際に問題になるのが、PCI後にどの程度の血小板活性抑制が得られていればよいのか、そのカットオフ値の設定だ。欧米ではVerifyNow P2Y12 Assayという測定法が普及しており、その場合は235 PRUが、また血管拡張薬刺激性リン蛋白(VASP)indexで測定した場合は50%が、それぞれのカットオフ値のコンセンサスとなっている。

 しかし、このカットオフ値を西川氏が行っているわが国のコホート研究であるMcLORDD(Mie Study of Clopidogrel Low Responder in Atherothrombotic Desease Patients with/without Diabetes)試験の登録患者にあてはめて検討したところ、日本人にはこれらのカットオフ値では高すぎると考えられた。

 クロピドグレルを代謝活性化する主な酵素であるチトクロームP450・2C19(CYP2C19)の活性がない遺伝子多型の保有率は、欧米人よりも日本人の方が高い。だがその一方で、ステント血栓症の発生率は欧米人の約3分の1にとどまる。これらの特性も踏まえて西川氏は、VerifyNowで測定した場合は302 PRUが、VASP indexでは61.6%が日本人のカットオフ値として適当と提案した。

 西川氏は、「日本人のカットオフ値を設定するための大規模試験が必要」としながらも、「PCIを施行した急性冠症候群の患者で、CYP2C19遺伝子の多型を持っていたり、血小板凝集活性がカットオフ値より高く残存している場合は、抗血小板療法は標準のDAPTではなく、クロピドグレルの増量やシロスタゾールを加えた3剤併用療法、あるいは(現在は開発中の段階だが)prasugrelを選択するといった個別化医療を進めていくべきではないか」との考えを示した。
 

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