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日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2010)
PCI後の抗血小板療法、その望ましい戦略は(1)
危険因子を持つ患者に対しては長期・強力な治療法を考慮

2010/09/14
軸丸 靖子=医療ライター

倉敷中央病院の門田一繁氏

 アスピリンとクロピドグレルを併用する抗血小板薬併用療法(DAPT)は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の心血管虚血イベントを予防する標準的な治療法になっている。だが、ステント血栓症の発症予防に必要十分な投与期間や、クロピドグレルを代謝活性化する酵素活性が低い遺伝子多型保有者への投与法などについてのコンセンサスは、まだ得られていない。

 第19回日本心血管インターベンション治療学会CVIT2010、8月22~24日、開催地:仙台市)のシンポジウム「抗血小板治療を考える」では、日本人のエビデンスに基づく長期投与の考え方や危険因子について、意見が交換された。

 まず倉敷中央病院の門田一繁氏は、DES留置後の抗血小板薬の投与期間について、わが国で行われた多施設・前向き追跡研究であるj-Cypherレジストリーの3年間の追跡結果を基に報告した。

 j-Cypherが解析対象としたのは、シロリムス溶出ステント(SES)で治療された1万778例。平均年齢は68.3歳と欧米の同様のレジストリーより高く、糖尿病合併率(41%)や慢性維持透析患者率(5.5%)なども高かった。一方で急性冠症候群(ACS)やST上昇型心筋梗塞患者は、欧米より少なかった。

 ステント血栓症はAcademic Research Consortium(ARC)分類のdefiniteと定義した。3年追跡の粗データでは、PCI後30日~3年間のステント血栓症発生率は年平均0.28%で、欧米の年平均0.5%程度と比べ低率だった。

 また、PCI施行から抗血小板療法中止までの期間とステント血栓症発生の関連を見たところ、PCI後半年まではアスピリンとクロピドグレルを両方とも中止するとステント血栓症の発生は有意に増加していたが、どちらか1剤の中止では有意な発生率の増加は認められなかった。

 さらに、PCI施行から半年以上経過していれば、クロピドグレル中止の有無は死亡や心筋梗塞の発生に影響しないことが分かり、PCI施行から半年を過ぎてもクロピドグレル投与を続けるメリットは示されなかった。

 ただ、実臨床ではPCI施行から1年以上たってもDAPTを続けている患者も多く、そのことが遅発性~超遅発性ステント血栓症の発症予防に寄与しているとも考えられる。そこで、どのような患者要因がステント血栓症のリスクを高めているのかを検討する必要がある。

 遅発性あるいは超遅発性ステント血栓症の危険因子としてj-Cypherでは、透析(相対リスク1.91)、末期腎疾患(同1.81)、分岐部病変への複数ステント使用(同1.81)が有意な予測因子になることが示されている。最近では、遅発性ステント圧着不全も危険因子となる可能性も指摘されている。

 さらに、フォローアップの冠動脈造影時、ステントの外側への造影剤の染みだし様所見(peri stent contrast staining;PSS)のある患者では、ステント血栓症の発生が有意に高いとの知見もあり、j-Cypherでも検討を行っている。

 門田氏は、「このような危険因子を持つ患者には、長期間、強力な抗血小板薬療法を行うという選択肢が考えられる」と述べた。

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