
東海大の伊苅裕二氏
わが国では脳神経外科医がリードしてきた頸動脈ステント留置術(CAS)だが、循環器内科医が行った場合の術後30日の主要有害事象(MAE)発生率は3.9%と、海外で行われた大規模臨床試験と同等の良好な成績であることが分かった。
循環器内科医がCASを行う施設での治療成績を評価するCAS-CARD(CArotid Stenting performed by CARDiologists in Japan)の中間解析結果で、東海大循環器内科の伊苅裕二氏が、第19回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT2010、8月22~24日、開催地:仙台市)のラウンドテーブルディスカッション「循環器医がCASに取り組むためには」で明らかにした。
頸動脈狭窄症は心血管疾患に合併しやすく、かつ循環器内科は血管内のカテーテル操作にたけていることから、CASは循環器内科医が取り組むべき分野の1つとされる。だがわが国では、循環器内科でCASを行う施設はまだ少ない。
伊苅氏は、循環器内科医によるCAS成績を調べるため、循環器内科医が行った症例のレジストリーといえるCAS-CARDから、CASが保険適用された2008年4月以降10年3月までの成績を抽出。1次エンドポイントを術後30日のMAE(死亡、心筋梗塞、脳卒中)として、解析した。
対象としたのは、現時点で解析可能だった26施設からの230症例(全対象施設は57施設で、約400症例の登録を想定)。男性84%、平均年齢73歳で、症候性症例は40%だった。循環器内科の担当症例であるため、心疾患合併率が76%(うち虚血性心疾患67%)と高率だった。糖尿病(56%)、高脂血症(74%)、高血圧(87%)の合併も多かった。
使用している抗血小板薬は、アスピリン(98%)、クロピドグレル(58%)、チクロピジン(17%)、シロスタゾール(34%)だった。
狭窄病変は右頸動脈が53%、左頸動脈が47%。99%が内頸動脈だった。対側頸動脈には21%に有意狭窄が、4%に閉塞が認められた。大動脈弓の解剖はタイプ1が47%、タイプ2が34%、タイプ3が19%で、術後合併症リスクを増大させる大動脈弓のanomalyは20例(9%)だった。
術中、病変部位へのアプローチは96%が大腿部から行われていた。使用したフィルターのサイズは5mmが30%、6mmが63%(平均5.8mm)。事前拡張は93%、事後拡張は97%で行われていた。留置したステント径は平均8.7mm、ステント長は平均38mmだった。
フィルターにデブリスが詰まることで血流が悪化するslow flowおよびno flowは17%に発生していた。最終的に術者が成功と判断したCASは97%だった。