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日本冠動脈外科学会2010
伏在静脈と橈骨動脈グラフトで遠隔期開存率に差なし
両グラフト同時使用症例を対象とした検討から判明

2010/08/25
高橋 浩=メディカルライター

日大の秦光賢氏

 大伏在静脈(SV)と橈骨動脈(RA)グラフトを同時に使用した冠動脈バイパス術CABG)症例の長期フォローアップ成績では、両グラフトの遠隔期開存率に差は見られなかった。

 第15回日本冠動脈外科学会学術大会(7月29~30日、開催地:大阪市)で、日大心臓血管・呼吸器・総合外科の秦光賢氏らが発表した。また、遠隔期開存率は積極的な脂質コントロールによって向上する可能性があることも明らかになった。

 CABGにおいて、グラフトの選択は患者の予後を大きく左右する。遠隔期開存率の高い内胸動脈(ITA)が最も優れたグラフトとされるが、太さや長さが十分でない場合がある。そのような症例では従来、SVが主に使用されてきたが、近年はSVよりも遠隔期開存率に優れるとされたRAを用いるケースが増えている。

 ところが最近になって、両グラフトの遠隔期開存率はほぼ同等とするランダム化比較試験の報告が相次いだ。なかには、RAの方が不良とした報告もある。ただし、開存率には生活習慣や内服薬など、個々の患者が持つさまざまな因子が影響するため、厳密には同一患者で比較する必要がある。しかし、SVとRAの同時使用例を対象とした検討は行われていなかった。

 秦氏らの施設では、2002年1月~2010年3月にCABGを912例に行った。SVとRAを同時に使用した症例は318例で、このうち長期フォローアップが可能だった192例(男性168例、女性24例、年齢64.3±8.6歳)を対象として、両グラフトの遠隔期開存率を比較検討した。

 グラフト使用本数は平均3.4本。使用グラフトの内訳は、左内胸動脈(LITA)179本、RA 192本、SV 242本、LITA・RA composite 13本。両グラフトの標的冠動脈に有意差はなかった。術後内服薬の使用率は、アスピリン100%、Ca拮抗薬96%、スタチン86%、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)81%、チクロピジン68%、β遮断薬64%、ワルファリン10%などで、評価期間は平均42カ月だった。

 遠隔期開存率は8年後において、LITAが96%と良好で、以下RA 74%、SV 65%の順だったが、RAとSVの間には有意差が見られなかった。発生したイベントは、グラフトへの経皮的インターベンションが5例、慢性心不全3例、急性心筋梗塞2例、脳卒中2例、慢性腎不全1例だった。

 8年生存率は90%、死亡は10例で、原因は癌3例、突然死2例、脳梗塞、脳出血、大動脈解離、心不全、腎不全各1例だった。
 

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