
帝京大の上妻謙氏
わが国の冠動脈血行再建術のガイドラインとして、「循環器病の診断と治療に関するガイドライン(1998-1999年度合同研究班報告)冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン(冠動脈バイパス術の適応を含む)-待機的インターベンション-」が発表されてから10年。
新たなエビデンスを踏まえ、改訂されることになった。関連学会からなる合同研究班が改訂に向け、作業を始めている。第15回日本冠動脈外科学会学術大会(7月29~30日、開催地:大阪市)で企画された、日本冠疾患学会との合同シンポジウム「冠血行再建のより良いガイドラインに向けて」では、外科医2人・内科医2人のシンポジストが登壇、ガイドライン改訂の方向性について議論がなされた。
内科医からは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも冠動脈バイパス術(CABG)の方が好ましい症例はもちろん存在するが、それは「左冠動脈主幹部(LMT)病変や多枝病変、糖尿病患者だからCABG」という単純な基準ではなく、併存疾患などの患者背景や病変の解剖学的特性を的確に把握したうえで判断すべきことが強調された。
PCIの適応は、デバイスの進歩とともに急速な広がりを見せてきた。従来、不良とされた多枝病変の長期成績も、CABGに肉薄するまでに改善されつつある。その一方で、PCIが明らかに適さない病変も具体的に分かってきた。
帝京大循環器内科の上妻謙氏は、個々の病変の評価によって治療法を選択するという考え方がガイドラインに反映されることが望まれるとした。
LMT病変と多枝病変を対象に、薬剤溶出ステント(DES)とCABGの優劣を比較したSYNTAX(Synergy Between PCI with Taxus and Cardiac Surgery)試験では、病変の解剖学的な特性を評価するSYNTAXスコアが導入された。
そのスコアが33点未満の「ローリスク群」ではPCIとCABGの成績に差は見られなかったが、33点以上の「ハイリスク群」ではPCIが不適切であることが証明された。
同氏は、「臨床医がこれまで経験的に行ってきた病変の評価を客観的に示してくれるSYNTAXスコアの意義は大きい」とした上で、「解剖学的にPCIが適さない患者には、やはり無理して行うべきではないだろう」と述べた。