
大阪市立大大学院の後藤仁志氏
関節リウマチ(RA)患者は健常人に比べて、動脈壁の肥厚、硬化ともに進行しており、その傾向は炎症、骨代謝障害や内臓脂肪蓄積の程度が強い症例ほど顕著であることが明らかになった。第54回日本リウマチ学会総会・学術集会(4月22~25日、開催地:神戸市)で、大阪市立大大学院代謝内分泌病態内科学の後藤仁志氏らが発表した。
欧米では、RA患者の心血管死が高率に認められ、動脈硬化がRA患者の生命予後に関連する重要な因子と位置付けられている。わが国では少なくとも現在、心血管イベントはRA患者の主要な死因とは考えられていないが、RAや同じ自己免疫疾患の全身性エリテマトーデス(SLE)において、動脈硬化が進展しやすいことを指摘した報告は少なからず認められる。
後藤氏らは今回、RA患者の動脈硬化を2つの指標で評価した。動脈壁肥厚の指標である頸動脈の内膜中膜複合体肥厚度(IMT)と、血管壁硬化の指標である脈波伝播速度(PWV)だ。
同氏らは既に、糖尿病合併例を含む透析患者438例を対象とした前向きコホート研究により、IMTまたはPWVが大きい群で心血管イベントの頻度が有意に高いこと、IMT、PWVが心血管イベントの独立した有意な予測因子になることを報告している。
まず、RA患者のIMTを測定し、年齢、性別、体格、喫煙、血圧値、血清脂質値に有意差のない健常群と比較したところ、RA群でIMTは有意に肥厚していた。多変量解析を行うと、年齢とともに、RA罹病期間、関節破壊の程度(Larsen's grade)、および骨密度低下の指標である踵骨の超音波骨評価値(OSI)が、IMT増大の独立した有意な危険因子であることが分かった。
IMTの推移を1年間にわたって観察すると、RA群では健常群に比べ、IMTの増加が有意に大きかった。このIMT増加率は、炎症マーカー値や尿中カルシウム排泄量と有意な正の相関を示した。