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STROKE2010
脳梗塞急性期の再開通療法は新しい時代に
tPA適応外または無効の症例に新たな治療手段が登場

2010/05/12
高橋 浩=メディカルライター

神戸市立医療センター中央市民病院の坂井信幸氏

 脳梗塞急性期に使用する経皮経管的脳血栓回収用機器Merciリトリーバルシステム(以下、Merci)が4月末に承認された。わが国の脳血管内治療の第一人者である神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科の坂井信幸氏は、STROKE2010(第35回日本脳卒中学会総会、第39回日本脳卒中の外科学会、第26回スパズムシンポジウムの合同開催、4月15~17日、開催地:盛岡市)の合同シンポジウム「脳梗塞急性期再開通療法」で、脳梗塞急性期の再開通療法は新しい時代に入ったとし、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)静注療法が適応外または無効の急性期脳梗塞症例に対して、本デバイスを含めた再開通療法を一定の基準の下で積極的に実施していくことを呼びかけた。

 Merciは、マイクロカテーテルの先端から自由解放下ではらせん状になるワイヤーを展開できるようになっており、このらせん部で血栓を捕捉、回収する(関連記事1)。これから日本で使用できるようになるのは第3世代のVシリーズで、血栓の大きさや部位に応じて、径2.0mm、2.5mm、3.0mmの3種類。血栓の回収率は約50%、慣れれば70%に達するという。

 2008年に報告された北米の前向き臨床試験Multi MERCI関連記事2)では、164例の脳梗塞患者(治療前NIH Stroke Scaleは中央値19、梗塞部位は中大脳動脈60%、内頸動脈32%、椎骨・脳底動脈8%)に、Merciの中では第1世代に当たるXシリーズと第2世代のLシリーズが使われた。

 Lシリーズを使用した131例での成績は、Merci単独で再開通が得られた症例は57%、tPA静注や他のデバイスによる治療を追加して再開通した症例は70%だった。術後出血は10%、手技に関連した重大な合併症は6%。転帰は、modified Rankin Scaleで0~2(自立)が、再開通群49%、非再開通群10%、死亡はそれぞれ25%、52%と、再開通群で明らかに良好だった。

 Merciに続いて、頭蓋内血栓を吸引する別のデバイス「PENUMBRA」も、来年には承認される見込み。評価方法がやや異なるが、再開通率は82%と、数値上はMerciよりもさらに高い。

 坂井氏は「わが国の脳梗塞急性期の再開通療法は、新しい時代に入った。Merciによって開かれた日本のマーケットに、各国の医療機器会社は高い関心を寄せており、今後続々と新しいデバイスが入ってくるだろう。市販後調査や各種臨床試験を推進するためにも、急性期脳梗塞の豊富な診療実績を有する施設から、この新しい治療を積極的に導入していくことが望まれる」と述べた。

 

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