
兵庫医大の福永匡史氏
[訂正:タイトルを一部訂正しました(2010/4/13)]
待機的冠動脈インターベンション(PCI)を施行する安定狭心症患者に対する術前のプラバスタチン投与によって、心臓の微小循環障害を軽減させられる可能性が示唆された。3月14日から米国アトランタで開催された第59回米国心臓学会(ACC2010)で、兵庫医大循環器内科の福永匡史氏が発表した。
近年、PCI後の末梢塞栓症、一過的な血管閉塞、側枝閉塞などを原因とする心筋障害マーカーの上昇が明らかになってきた。しかもPCI施行後の微小循環障害は、心筋障害マーカーの上昇が見られる前から進行することが指摘されている。この微小循環障害の改善が、冠動脈疾患患者の予後に影響しているとされる。
一方、微小循環抵抗指数(index of microcirculatory resistance:IMR)によって、微小循環障害を評価できることが明らかとなってきた。IMRとは、プレッシャーワイヤーを使用して生理食塩水を流し、通過時間を測定することによって微小循環を評価する方法だ。
そこで福永氏らは、冠動脈狭窄が50%以上の安定狭心症患者80例を対象に、術前プラバスタチン投与群とプラセボ群に割り付け、待機的PCI施行後にIMRや心筋マーカーなどを測定・比較した。プラバスタチンまたはプラセボによる治療は、PCI施行前に4週間行った。
対象者の登録時背景は、両群ともに年齢68歳、男性が8割。合併症は高血圧が55~70%、糖尿病は約4割、心筋梗塞既往例は10%程度で、PCI施行歴のある患者はプラバスタチン群40%、プラセボ群20%だった。2群間に有意差は見られなかった。左室駆出率は両群ともに約60%だった。
ランダム化時の各血清脂質値は、総コレステロール(TC)値が約215mg/dL、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値が約132mg/dL、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)値が約54mg/dL、中性脂肪値が約160mg/dLで(値はいずれもプラバスタチン群)、プラセボ群もほぼ同様であり、2群間に有意差は見られなかった。