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日本心臓血管外科学会2010
周術期管理の改善で術後感染が有意に減少
「術後の厳格血糖管理の寄与が大きかった印象がある」と演者

2010/03/01
後藤 恭子=医療ライター

昭和大の宮内忠雅氏

 心臓や大血管手術後に発生する術後感染は、手術成績に大きく影響する因子であり軽視することはできない。周術期の清潔管理や栄養管理、抗菌薬の投与法といった総合的な対策の実施により術後感染発生率が有意に減少したことを、第40回日本心臓血管外科学会学術総会(2月15日~17日、開催地:神戸市)で昭和大胸部心臓血管外科講師の宮内忠雅氏が報告した。

 昭和大学病院では2008年1月から、米疾病対策センター(CDC)のガイドラインなどを参考に周術期管理のプロトコールを独自に作成し、術後感染対策を実施している。

 その効果を検証するため、07年1月~09年12月に同院で行った心臓大血管手術例について、周術期管理法の変化に合わせA期(07年1~12月、147例)、B期(08年1~9月、101例)、C期(08年10月~09年12月、198例)に分類。各期における中心静脈(CV)カテーテル先端培養および血液培養の陽性率、縦隔洞炎発症率、術後の喀痰培養におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)陽性率を比較した。

 各期において、手術術式や患者の平均年齢、緊急手術率などに大きな違いはなかった。

 周術期管理のプロトコールは、A期では術前管理に特に規定はなく、術中管理ではスタンダード・プリコーションと閉創時の縦隔内洗浄を実施。術後管理では抗菌薬を5~7日間予防投与し、毎日の包帯交換、感染が疑われた場合は広域スペクトルの抗菌薬によるエンピリック治療を行っていた。

 B期では、術前に糖尿病管理(HbA1c≧6.5%の場合は糖尿病内科にコンサルト)と鼻腔のMRSA検査(症例により除菌)を実施。術中にはA期の対策に加えセファゾリンの3時間ごとの投与(MRSA保菌者の場合はバンコマイシンも使用)、血餅除去など術野の積極的な清拭を実施した。術後にはA期の対策に加えCVカテーテルを早期抜去し、先端培養を行った。

 C期では、術前管理としてB期の対策に加え栄養状態の評価(低栄養の場合はNSTにコンサルト)、呼吸機能の評価(必要なら呼吸リハビリを実施)、歯科による口腔ケアを行った。術中にはB期までの対策に加えグローブ2重着用、人工血管や弁などを扱うときは直前のグローブ交換、落下物防止のためマスク付き手術衣の着用を励行した。

 さらに術後は、CVカテーテルの早期抜去や先端培養は続けたが、(1)抗菌薬の予防投与を術後24時間に制限、(2)血糖値を150mg/dL以下に管理、(2)毎日の包交をやめ2日目から創部をハイドロコロイドドレッシングで保護、(3)術後経口摂取ができない患者に対する誤嚥予防策の実施、(4)必要ならばNSTによる栄養管理、(5)感染が疑われた患者はICTによるコンサルトと適切な抗菌薬の選択、(6)定期的な口腔ケア――などを実施した。

 

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