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必要な時期に必要な量の薬剤を放出できるステントグラフト
山口大の研究グループが新たなシステムの基盤技術を開発

2010/02/23
高志 昌宏

 山口大大学院器官病態外科学講師の吉村耕一氏らのグループは、大動脈瘤の拡大を予防するような薬剤を任意の期間、量を調節しながら放出できるステントグラフトのシステムを考案し、基盤技術の開発に成功した発表した。

 低侵襲であることが評価され、大動脈瘤の治療法としてステントグラフトによる治療が普及してきた。だがその3分の1から半数はステントグラフト留置後も動脈瘤が残存し遠隔期の瘤破裂のリスクが残ることから、そのような症例に対する新たな治療的介入の必要性が指摘されていた。

 吉村氏らは、生体物質であるアビジンビオチンの間に高い親和性があることに着目。その親和性を利用して「再充填が可能な薬物送達システム(rechargeable drug delivery system:RDDS)」を考案した。

 ステントグラフトは、グラフト(人工血管)表面にまずビオチンを固定し、それに生体反応性が低いニュートラアビジンを結合させた。一方、薬剤輸送担体としては、大動脈瘤部分の血管壁に高濃度で分布させたい薬剤をまずリポソームに封入し、さらに表面にビオチンを結合させたバイオナノカプセルとリポソームを融合させた「バイオナノカプセル・リポソーム融合体」を作成した。

 大動脈瘤治療としてこのステントグラフトを留置しても大動脈瘤が残存する場合、例えば血管壁の炎症を抑制する物質などを封入した薬剤輸送担体(バイオナノカプセル・リポソーム融合体)を作成し、静注する。血中に入った薬剤輸送担体はステントグラフトのニュートラアビジンを認識し結合、グラフトに集積する。その場でリポソームの分解に従って薬剤が拡散しグラフトを通過、ステントグラフトで覆われた大動脈壁局所に薬剤が到達するという仕組みだ。

 

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