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日本冠疾患学会2009
低左心機能CABG患者の予後を術中hANP投与が改善
「心臓外科手術の術中・術後管理に新たに加えるべき薬剤」と演者

日大の和久井真司氏(左)と瀬在明氏(右)

 左室駆出率が低下した冠動脈バイパス術CABG)施行患者に対して術中から低用量で遺伝子組換え心房性ナトリウムペプチドhANP)を持続投与することで、術後合併症の発生を抑制し、遠隔期の腎障害心血管イベントの発生も抑制できることが明らかになった。

 日大心臓血管外科学の和久井真司氏、同科講師の瀬在明氏らが実施したランダム化二重盲検試験の結果から明らかになったもので、第23回日本冠疾患学会学術集会(12月18~19日、開催地:大阪市)で和久井氏が発表した。

 同グループは、血管拡張作用やNa利尿作用、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の抑制作用、冠状動脈拡張作用、左室リモデリング抑制作用などがあるhANPが心臓外科手術の欠点を補うと考え、これまでにCABG例、急性冠症候群例などに対するhANPの有効性を7つのランダム化比較試験で評価してきた。

 今回、術後の予後が悪い低左心機能症例のCABGに対するhANPの有効性を評価するために、ランダム化比較試験「NU-HIT trial-CABG for LVD」を行った。

 1997年から2008年までの単独CABG症例中、術前の左室駆出率が35%以下で、心原性ショック例や血液透析例、オフポンプCABG施行例を除いた133例を対象に、hANP群68例とプラセボ群65例に割り付けた。

 hANPは、体外循環開始とともに0.02γで投与し、術後に経口薬投与を開始する際に0.01γに下げて12時間投与した。

 血液生化学検査として、術前、ICU帰室後、術後1日、術後3日、術後1週間において、ANP、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、レニン、アンジオテンシンII、アルドステロン、血清クレアチニン、糸球体濾過値(eGFR)を測定。術後1カ月、6カ月、1年には、BNP、血清クレアチニン、eGFRを測定した。また、超音波検査を術前と術後(1週間、1カ月、1年)に行った。

 hANP群とプラセボ群の間で、年齢、性、CABGの原因疾患、糖尿病や高血圧、肥満、喫煙歴、脳血管疾患既往歴、慢性腎疾患合併などの患者背景に有意差はなかった。

 手術データはhANP群とプラセボ群でほとんど変わらず、フロセミド投与例や投与量など、カリウム値を補正する治療がhANP群で有意に少なかった。

 術後データではhANP群において、クレアチニンの最大値(hANP群:1.14±0.41mg/dL、プラセボ群:1.29±0.92mg/dL)やCKP-MBの3日後の値(hANP群:8.4±4.1 U/L、プラセボ群13.0±10.6 U/L)が有意に良好だった。術後の不整脈発生率についても、心室性、心房性ともにhANP群で有意に少なかった(図1)。

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