
国立循環器病センターの戸田宏一氏
国立循環器病センター心臓血管外科の戸田宏一氏らは、心拡大が進んだ重症の虚血性心筋症(ICM)に対して、冠動脈バイパス術(CABG)と共に行った左室形成術(SVR)が、心機能や予後を有意に改善させたことを明らかにした。
欧米で行われた大規模ランダム化比較試験のSTICH(Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure)では、SVRの意義はないという結果になった。異なる結論になったことに関して戸田氏は、STICH試験ではSVRによる左室縮小効果が不十分であったためにネガティブな結果が出たとの見方を示した。第23回日本冠疾患学会学術集会(2009年12月18~19日、開催地:大阪市)で、同氏が発表した。
ICMは、心筋梗塞により虚血心筋が収縮しなくなるため、経年的に左室全体が拡張し、拡張型心筋症と類似する病態を呈する。β遮断薬、ACE阻害薬といった薬剤や両室ペーシングなどの治療法が有効とされるが、重症になると従来は心臓移植に頼るしかなかった。
しかし1980年代半ばから、新たな治療法としてSVRが報告されるようになり、ここ5~6年の間に、複数の後向きコホート研究で有効性が認められた。これを受け現在は、重症例に対してSVRが広く行われるようになっている。
ICMに対するSVRの効果を見た初めての大規模RCTと位置づけられるSTICH試験でも、ポジティブな結果になることが予想されていた。ところが、2009年春に発表された成績はまったく異なるものだった(関連記事1[ACC2009 LBCT]、関連記事2[新着文献])。すなわち、1次エンドポイントの全死亡、心イベントはもとより、症状、運動耐容能も含め、すべての項目でCABG単独群とCABG+SVR群との間に有意差が認められなかった。