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日本創傷治癒学会2009
治療抵抗性足潰瘍・壊疽にマゴットセラピーが奏効
多剤耐性菌の繁殖を制御し肉芽組織を増生

2009/12/17
大滝 隆行

 従来治療に反応せず足切断もやむを得ないと考えられた難治性足壊疽・潰瘍50例に対し、マゴットmaggot:ハエの幼虫、ウジ)セラピーを実施したところ、44例(88.0%)が改善し自立歩行で退院したと、日本医大再生医療科部長の宮本正章氏が第39回日本創傷治癒学会(12月8~9日、東京)の指定講演で報告した。

 近年、糖尿病末梢動脈疾患PAD)の増加に伴い、重症の足潰瘍・壊疽が多く見られるようになってきた。潰瘍・壊疽部位にはMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)やMDRP(多剤耐性緑膿菌)などの耐性菌が繁殖していることが多い。同大再生医療科で初診時に実施した細菌培養検査では、38%が多剤耐性菌陽性だった。

 そうした症例のほとんどは既存の治療に反応せず、骨髄炎や蜂窩織炎、筋膜炎から敗血症などを併発して、足切断を余儀なくされることが少なくない。

 マゴットセラピーは、1930年代から欧州をはじめ世界各国で創傷に対して実施されている伝統的な治療法。戦後の抗菌薬や外科手術の進歩により廃れたが、医療現場での多剤耐性菌の増加により再び脚光を浴び始めた。2004年には、米食品医薬品局(FDA)が正式な医療材料として承認している。

 マゴットは、創面をはい回りながら蛋白分解酵素を分泌して壊死組織を溶かし、それを吸い上げて壊死組織を除去する。虫体の小さなトゲが壊死組織に小さな穴を開け、組織への酵素の浸透を促進する。その分泌液には抗菌ペプチドも含まれており、MRSAなどの耐性菌をも殺菌する作用がある。細菌は、酸性が保たれたマゴットの消化液によっても殺菌される。

 また、マゴットが創面をはい回ることで肉芽組織の増生スピードが速まることが知られている。これは最近の研究で、マゴットの分泌液中に含まれる尿素や炭酸水素アンモニウム、アラントインのほか、EGF(上皮成長因子)やIL-6などのサイトカインによる血管新生作用、線維芽細胞刺激作用に基づくことが分かってきた。

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