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AHA2009
β受容体遮断は実証済みの最も効果的な慢性心不全治療
最初の報告は70年代、「その後長い間、医学界はβ遮断薬の使用を拒み続けた」

2009/12/08
中西 美荷=医学ライター

スウェーデン・イェーテボリ大学教授のKarl Swedberg氏

 交感神経系の持続的な活性化が慢性心不全の発症や死亡の増加に関与すること、これをβ遮断薬で抑制すると予後が大きく改善することは、今日、ゆるぎない知見になっている。しかしここに至るまでには、当時の常識に挑戦し、真実を探求し、患者を救おうとする研究者たちの努力があった。

 慢性心不全におけるβ遮断薬の効果を初めて報告した著名な研究者である、スウェーデン・イェーテボリ大学教授でサールグレンスカ(Sahlgrenska)アカデミー救急心血管部門医長のKarl Swedberg氏が、米国心臓協会年次学術集会(AHA2009)のPaul Dudley White記念国際講演で、心不全治療におけるβ遮断薬治療の概念と実際について概説した。

 Swedberg氏が研修医だった1970年代には、アドレナリン作動性神経は心不全の進行に対する代償機能を担っており、これを妨げる可能性のある抗アドレナリン作動性薬剤の投与は避けるべきだと考えられていた。そのため当時の慢性心不全治療では、もっぱら陽性変力作用を有する薬剤による心刺激に注目が集まっていた。

 これを変えるきっかけになったのが、Swedberg氏の当時の指導医だったAke Hjalmarson氏とFinn Waagstein氏らの研究だった。彼らは「交感神経系の刺激は心不全の進行を助長しており、β遮断薬が病状悪化を防ぐ」との仮説を打ち出し、75年には心不全患者に対するβ遮断薬治療の成功例を報告した。対象患者となった当時58歳の女性は、その後25年間生存した。

 Hjalmarson氏から研究を任されたSwedberg氏は、突発性拡張型心筋症患者を対象とした前向き試験を行い、β遮断薬投与による生存率の延長を示す予備的な検討結果として、79年、Lancetに報告した[Lancet. 1979;1(8131):1374.]。

 その後もβ遮断薬の有効性を肯定する知見が集積されていったが、「医学界は長い間、心不全に対するβ遮断薬の使用を拒み続けてきた」(Swedberg氏)という。

 

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