
カナダ・オタワ大学のAlexander Kulik氏
冠動脈バイパス術(CABG)後に大伏在静脈グラフト(SVG)に発生する病変に対し、抗血小板薬併用療法(アスピリン+クロピドグレル)の効果を、標準療法であるアスピリン単独と比較した初の前向き無作為化二重盲検試験、CASCADE(The Clopidogrel After Surgery For Coronary Artery Disease)の結果が発表された。
術後1年での、両群における静脈グラフト開存率、主要有害心イベント(MACE)発生率、および出血頻度に有意差はなく、CABG後の静脈グラフト病変予防におけるクロピドグレルの上乗せ効果は認められなかった。米国心臓協会学術集会(AHA2009)で、同試験の主任研究者であるカナダ・オタワ大学のAlexander Kulik氏が報告した。
CABGは、虚血性心疾患に対する効果的な治療法だが、その長期成績は静脈グラフト病変の発生によって低下する。一般に術後1年で15%が閉塞に至り、10年後の開存率は60%とされる。
グラフト閉塞には、初期血栓、内膜増殖、動脈硬化という3段階の経過をたどる。培養細胞での実験や動物モデルでは、クロピドグレルに内膜増殖抑制効果が示されていることから、CABG後の標準的な抗血小板療法であるアスピリンにクロピドグレルを加えることで、SVGの内膜増殖を抑制できるのではないかと期待されていた。
CASCADE試験では2006年5月~2008年7月に、複数血管に対して2本以上のSVGを用いたCABGを受け、書面による同意書を得た126 例が登録された。このうち113例を、アスピリン162mg/日+プラセボを投与する標準療法群(57例)と、アスピリン162mg/日+クロピドグレル75mg/日を投与する併用療法群(56例)に無作為に割り付け、1年間後に血管造影と血管内超音波検査(IVUS)による評価を行った。