
国立病院機構西札幌病院の岡本洋氏
突然死は慢性心不全の主要な死因となっているが、その病態解明は遅れている。β遮断薬投与中に突然死した症例は、β遮断薬投与による左室駆出率(EF)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)改善の程度が小さく、心拍数低下が大きいといった特徴のあることが分かった。
第13回日本心不全学会学術集会(10月30日~11月1日、開催地:福岡市)のシンポジウム「心不全患者と突然死――その予防と対策」で、国立病院機構西札幌病院循環器科の岡本洋氏が発表した。
今回、岡本氏らはJ-CHF試験に登録された症例を解析対象とした。同試験は、日本人の慢性心不全患者に対するβ遮断薬の至適最小用量を決定するために行われたもの。主要な結果は、今年の米国心臓協会学術集会(AHA、11月14~18日、オーランド)で発表された。
J-CHF試験では、症状が安定していて、NYHA分類II~III度、EF<40%の慢性心不全患者を対象に、通常治療に加えて3用量(2.5mg/日、5mg/日、20mg/日)のカルベジロールを無作為に割り付け、4~8週間の観察期の後に用量を固定して経過を観察した(固定期)。1次エンドポイントは、総死亡と、心不全および心血管疾患による入院である。
2003年7月に開始し、131施設から364例(平均60.2歳、男性74%)が登録されたが、平均観察期間3.2年時点で中間解析に必要なエンドポイント数に達したため、安全性評価委員会から試験中止が勧告された。
経過観察中に確認された総死亡は24例で、内訳は突然死14例、不全死5例、その他の原因による死亡5例だった。