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日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)2009
日本人に多いクロピドグレルのPoor Metabolizer
だが臨床アウトカムは欧米より良好、その理由は・・・

2009/07/31
高志 昌宏

京大の堀内久徳氏

 クロピドグレルの抗血小板活性は、同薬の代謝酵素の遺伝子多型を原因として個人差が大きいとされる。わが国の冠動脈形成術PCI)施行患者25例を対象に代謝酵素の遺伝子型を調べたところ、変異遺伝子を持たない正常型(野生型)は44%とほぼ半数にとどまることが分かった。第18回日本心血管インターベンション治療学会学術集会(CVIT2009、6月25~27日、札幌)のパネルディスカッション「PCIと抗血小板療法」で、京大の堀内久徳氏が報告した。

 クロピドグレルは、肝臓の薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)で代謝されて活性体となる。CYPは多くの分子種があり、クロピドグレルは主にCYP2C19で代謝される。ただ、このCYP2C19には、酵素活性がない*2(star two)や*3(star three)という遺伝子多型(遺伝子変異)の存在が知られている。

 対象患者25例のCYP2C19遺伝子を調べたところ、代謝活性を持たない遺伝子をホモで持つ(*2/*2および*2/*3)「Poor Metabolizer(PM)」が6例(24%)、ヘテロで持つ「Intermediate Metabolizer(IM)」が8例(32%)、酵素活性がある正常遺伝子をホモで持つ「Extensive Metabolizer(EM)」が11例(44%)という結果になった(Jinnai T, et al. Circ J. 2009;73:1498-503)。

 患者の遺伝子型と抗血小板活性の関連を見ると、実際にEMよりもIMとPMでは血小板凝集能抑制率が低値で、EMとIM間、およびEMとPM間には有意差が見られた。酵素活性がない*2や*3の遺伝子型をホモで持つPMでもクロピドグレルの抗血小板活性がゼロにはならないのは、CYP2C19以外の分子種でも一部代謝されるためという。

 *2や*3という遺伝子多型はアジア人で多く、欧米では正常型が8割を占める。「一般に日本人は白人に比べクロピドグレルの効果が弱いとされるが、それは遺伝子変異が強く影響していると考えられる。ただ、PMでも効いている人もいるので、遺伝子型ですべて説明できるわけではない」と堀内氏は説明する。

 また個人差の原因として実際の臨床では、薬物相互作用の影響もあるようだ。CYP2C19はクロピドグレルの代謝活性化だけでなく、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の代謝不活性化にもかかわっている。そのためクロピドグレルとPPIを併用すると2剤がCYP2C19を取り合ってしまい、PPIは代謝されにくくなって作用が強まり、クロピドグレルは活性化されにくくなり作用が弱まる可能性がある。

 先の患者でPPIの服用状況と抗血小板活性の関連を見たところ、オメプラゾールおよびランソプラゾール服用者で、血小板凝集能抑制率が各遺伝子型(EM、IM、PM)の平均値よりかなり減弱していた例があった。この結果について堀内氏は、「例数が少なく結論を出す段階ではないが、PPIとクロピドグレルの相互作用が実際に起こっている可能性はある」とする。

 米国の退役軍人病院を中心とした研究グループは今年3月、急性冠症候群(ACS)後にクロピドグレルを服用している患者がPPIを併用すると、総死亡またはACSによる再入院のリスクが25%高まったとJAMA誌に報告した(関連記事)。

 もっとも、PPIとクロピドグレルを併用すべきではないのか、米国でも見解は統一されていない。2008年、米国心臓学会や米国消化器学会などが共同して、アスピリンを含む非ステロイド性抗炎症薬による出血を防ぐ観点からエキスパートコンセンサスを発表した(こちら)。そこでは、低用量アスピリンとクロピドグレルの併用者では、無条件にPPIの服用を推奨している。

 ところが09年1月、米食品医薬品局(FDA)はクロピドグレルとPPIの相互作用を早急に再評価すると声明を出しており(関連記事)、5月にはthe Society for Cardiovascular Angiography and Interventions(SCAI)が、PCI後にアスピリンとクロピドグレルを併用している患者に対しては、PPIではなくH2ブロッカーや制酸剤を推奨した(関連記事)。「この件についてはまだ混沌とした状況で、早くしっかりとしたデータを作る必要がある」と、堀内氏は指摘した。

 

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