
京大の木村剛氏
シロリムス溶出ステント(Cypher)留置後に発生したステント血栓症例のレジストリー研究「RESTART」から、発症時期ごとの具体的な予測因子が明らかになった。6月25~27日に札幌市で開催された第18回日本心血管インターベンション治療学会学術集会(CVIT 2009)で、京大の木村剛氏が発表した。
今回木村氏が解析したRESTART(Registry of Stent Thrombosis for Review and Re-evaluation)レジストリーは、シロリムス溶出ステント留置後のステント血栓症の中で、Academic Research Consortium(ARC)の定義でDefinite(急性冠症候群の臨床所見[胸痛、心電図変化、心筋マーカー上昇]を伴い、血管造影あるいは剖検でステントの閉塞あるいは血栓像が認められた場合)とされた症例を集積。
多数例でステント血栓症の臨床像や抗血小板療法の実施状況、画像所見などを詳細に検討するだけでなく、シロリムス溶出ステント留置症例のレジストリーであるjCypherからステント血栓症の非発症例を抽出、これを対照群とする後向きのケースコントロール研究を設定し、発症時期ごとにステント血栓症の予測因子を明らかにすることを目的に企画された。
レジストリーには全国の543施設が参加。ジョンソン・エンド・ジョンソンに自発報告されていた症例に新規登録例を加え、計611例を解析対象とした。「ステント血栓症のレジストリーとしては世界最大規模」(木村氏)という。
発症時期による内訳は、Early(30日以内)322例、Late(31~365日)105例、Very late(366日以上)184例。EarlyをAcute(24時間以内)とSubacute(1~30日)に分けると、Acute 52例、Subacute 270例だった。
ステント血栓症発症時、発症時期にかかわらず60~70%はST上昇型の急性冠症候群(ACS)症状を呈しており、心停止に至った症例もEarly 11%、Late 6.0%、Very late 5.8%に上った。一般に重篤とされる多枝同時ステント血栓症が、Early 4.4%、Late 1.0%、Very late 3.3%で生じていた。また、外科手術のために抗血小板療法を中止した期間に発生したステント血栓症は、Early(2.8%)に比べLate(7.6%)およびVery late(6.0%)で高くなっていた。
抗血小板療法の実施状況とステント血栓症の関連を見ると、Earlyでは76%がアスピリンとチエノピリジン系の2剤を併用していたが、Late 52%、Very late 21%と時期を追うごとに減少していた。一方、2剤とも中止していた症例はEarly 7%、Late 17%、Very late 22%、アスピリンのみ服用例がEarly 11%、Late 28%、Very late 51%だった。
チエノピリジン系のみの中止か、2剤ともに中止のどちらがステント血栓症のリスクとなるか調べたところ、2剤中止症例では中央値13日、チエノピリジン系中止例では同314日でステント血栓症が発症しており、2剤中止の方が有意にリスクは高いことが分かった。
発症1年後の累積死亡率は、Early 22.4%、Late 23.5%、Very late 10.5%といずれも予後不良だったが、急性期を過ぎると死亡率の上昇は軽度となった。Very lateの死亡率は低いが、多変量解析で補正すると有意差はなくなったことから、患者背景の違いによるものとされた。