日経メディカルのロゴ画像

日本循環制御医学会2009
和温療法は重度の心不全やASOに有効
NOの増加を介して血行動態や血管内皮機能を改善

2009/06/22
高志 昌宏

鹿児島大の鄭忠和氏

 心不全閉塞性動脈硬化症ASO)に対して「和温療法」は著明な効果があり、その機序は組織内一酸化窒素NO)の増加を介した循環動態や血管内皮機能の改善にある――。第30回日本循環制御医学会総会(6月12~13日、鹿児島市)で鹿児島大大学院循環器・呼吸器・代謝内科学教授の鄭忠和氏は、和温療法の臨床効果と基礎的検討の現状を詳説した。

 和温療法とは、「心身を和ませる温度で全身を15分間暖め、深部体温を約1.0~1.2度上昇させた後、さらに室温で30分間安静保温し、最後に発汗に見合う水分を補給する」という治療法。加温は、室内を温度差なく60度に維持できるようにした、遠赤外線による乾式のサウナ(「均等和温サウナ室」または移動可能な「均等和温サウナ装置」)で行う。

 開発のきっかけは、鄭氏が1989年に同大霧島リハビリテーションセンターに赴任した際、血行動態に与える温浴の効果について検討を始めたことだった。その結果、温浴の急性効果として前負荷と後負荷の軽減による心拍出量の改善が認められたことから、それまで心不全に対しては禁忌とされてきた温浴が、逆に治療法として考えられるようになった。なお、当初は「温熱療法」だったが、癌の温熱療法と区別するため、最近は「和温療法」と呼んでいるという。

 重症心不全に対する著効例として同氏は、拡張型心筋症などでいずれもNYHA IV度で入院してきた症例を数例紹介。一般的な心不全の治療に1日1回の和温療法を2~4カ月併用することでNYHA I~II度に改善、退院して日常生活に復帰できた。

 このような著効例から期待が広がり、鹿児島大、東京女子医大、虎の門病院など全国10施設による「慢性心不全に対する和温療法の前向き多施設共同研究」が実施された(J Cardiol. 2008;52:79-85)。NYHA II度以上の慢性心不全患者188例を対象に、通常の治療に2週間(10回)の和温療法を併用した群と通常治療のみの群を比較するという試験で、心胸郭比、左房径、左室拡張末期径、左室駆出率、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などが有意に改善し、安全性と有用性が確認できた。

 長期的な予後改善効果についても、後ろ向き研究の結果がまとまっている(J Cardiol. 2009;53:214-8)。99~2000年に入院した心不全患者中、和温療法実施群64例と非実施群65例について、エンドポイントを死亡あるいは心不全による再入院として5年間の経過を追跡したもので、和温療法実施群で有意な予後改善効果が認められた。

 

この記事を読んでいる人におすすめ