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日本循環器学会2009 第5回心臓移植セミナー
海外渡航移植に依存する日本の心臓移植に警鐘
イスタンブール宣言で渡航移植の門戸が閉じられつつあるのだが・・

今期大会会場となった大阪国際会議場

 第73回日本循環器学会総会・学術集会の初日(3月20日)、「我が国の心臓移植はどのようにあるべきか―将来への提言」というテーマで第5回心臓移植セミナーが行われ、医療関係者以外からも貴重な報告と提言があった。その概要を筆者の記憶に基づいて再現する。

 まず、岐阜大第二内科准教授の西垣和彦氏が、日本循環器学会・心臓移植委員会が行っている予後継続調査の結果を公表した。日本循環器学会・心臓移植適応小委員会への適応症例申請数は、1997年(臓器移植法施行)以来2009年3月10日までに555症例で、その中で適応となった症例は473症例(85%)だった。3月10日の時点で150症例の国内外心臓移植があり、国内は64症例、海外は86症例だった。

 10年間(1999年の移植初例から)での国内移植実施数が64例というのは、台湾の年間平均移植症例数にほぼ等しく、韓国の年間平均移植症例数の2年分に相当する。アンケート調査対象となった適応症例432例中136例(31%)で移植が実施されたが、その50%が米国で行われていた。日本での実施は58例で、全体の13%に過ぎなかった。

 国内外で移植を受けた136例中、現在まで生存している125例の90%はNYHAがI度で、66%は職場復帰しており、5年生存率は90%だった。移植未実施296例の5年生存率33.6%と対照的であった。移植後生存率が国際レジストリーに比較しても抜群に良好であることから、西垣氏は国内移植数増加の必要性を訴えた。

 次いで登壇した日本ドナー家族クラブの間澤洋一・容子夫妻は、ドナー家族の立場から貴重な意見を述べられた。97年、米国留学中だった長女の朝子さんが交通事故に遭遇し脳死となり、生前の意思により彼女の臓器が米国人6人に移植された。在学していたフラミンガムステイトカレッジからは名誉学位が贈られ、学内にはメモリアルガーデンが設けられた。肝臓のレシピエントとは、現在も家族ぐるみの交流をしているという。

 「日本国内でドナーとレシピエントが顔を合わせることは難しいことは理解している。だが日本で“臓器提供”という言葉を聞くと、ドナーの命をまるで物のように表現しているように思えてならない。米国における“ギフトオブライフ”の考え方、『ドナーに対する感謝の気持ち』が、日本でもより明瞭に表現されてよいのではないか。そうした努力がなければ、ドナーは増えないだろう」と提言された。

 第三席では、3年間補助人工心臓を装着しながら待機し、08年7月に国立循環器病センターで心臓移植を受け現在外来通院中の40歳代の男性患者さんが発言した。

 渡航移植する患者には病院から2人の移植医が添乗するため、病棟は危機的に手薄になる。病棟のほぼ全員が補助人工心臓を装着しているため、脳梗塞などの血栓塞栓症や敗血症など重篤な感染症への対応が、日本最高レベルの病棟であっても不可避的に起こる。

 「募金をして米国へ渡航する同じ病棟の患者には複雑な気持ちを持ちながら、移植医が病棟にいない間は大変不安な日々を過ごしてきた。自分は渡航移植には絶対反対であり、なんとしても国内移植を推進・充実してほしい。」

 「臓器の自給自足を促す国際移植学会のイスタンブール宣言を受けて、各国とも渡航患者に対する窓口を閉ざし始めている。小児患者の命綱になっている日本の渡航移植も、消滅するだろう。厚生労働省の担当者が2年おきに変わるようなことは止めて、移植法案の改正に全力で努力してほしいし、国内移植の充実に正面から取り組んでほしい」と訴えた。

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