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特報◆感染症心内膜炎予防のための抗菌薬投与 vol. 3
日本循環器学会の改訂ガイドライン発表される
適応疾患は不変だが、消化器・泌尿器科的手技時などが必須から外れる

2008/11/25
高志 昌宏

 日本循環器学会など関係4学会による「感染症心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)」(以下、JCS2008と表記)が本日(11月25日)、公開された。本ガイドラインは2003年に発表されたもの(以下、JCS2003と表記)の改訂版で、前回と同様に国立病院機構大阪南医療センター院長の宮武邦夫氏が班長を務めた。

 2007年、米国心臓協会AHA)は感染性心内膜炎の予防に関するガイドラインを改訂、同症予防のための抗菌薬投与の適応をかなり限定的なものにした。また08年には、心臓弁膜症に関する米国心臓学会ACC)とAHAの合同ガイドラインも、感染性心内膜炎の部分について、07年のAHAガイドラインに準拠した改訂を行ったことは既報のとおり(関連記事)。

 この点に関してJCS2008では4章の「予防」の項で、「抜歯などの歯科的処置の前には従来どおり実施することを推奨するが、消化器あるいは泌尿器科的手技に際しては、感染性心内膜炎を引き起こす腸球菌が多剤耐性であることが多いことを勘案し、感染性心内膜炎の予防のための抗菌薬投与は必須ではないと改めた。さらに、抗菌薬の予防投与の投与量については、わが国の事情を勘案し、患者の体型などで主治医の裁量を大きく認めた」と記している。

 具体的にJCS2003の表11「ハイリスク群において抗菌薬の予防投与を必要とする手技」とJCS2008の表12「抗菌薬の予防投与を必要とする手技」を比較すると、「必須(クラスI)」の手技は12から3に減り、多くは「投与してもよい(クラスIIb)」に移された。また、抗菌薬の一覧表(JCS2008の表15)では、アモキシシリンの投与量について、成人2.0gという基本は変わらないものの、脚注は「体格、体重に応じて減量可能である」という表現になり、「日本化学療法学会は(中略)500mg経口投与を提唱している」とも加えられた。

 一方、07年のAHAガイドラインでは、予防投与の適応を、ハイリスク症例の中でも感染性心内膜炎を発症したときに特に重症化しやすい病態(人工弁、心内膜炎の既往、複雑性チアノーゼ先天性心疾患、動脈肺動脈短絡作成術後)に限定した。これに対してJCS2008では、「感染性心内膜炎になりやすい基礎疾患(ハイリスク群)すべてに対して、抗菌薬の予防投与を推奨する」と、適応となる疾患は変わっていないことを強調している。

 JCS2008の編集方針について班長の宮武氏は「抗菌薬の予防投与についてはAHAの内容を踏襲したものにはならない」とコメントしており(関連記事)、AHAの改訂ガイドラインを参照しつつもわが国の状況に沿った改訂といえるのだろう。実際、本サイト「循環器プレミアム」の読者を対象としたアンケートでも、「エビデンスがない現状では致し方ない」といった消極的賛成を含めると、回答者の65%が広範な抗菌薬予防投与を認めていた(関連記事)。

 同ガイドラインは日本循環器学会ホームページから、会員・非会員にかかわらず閲覧・ダウンロードが可能だ(ガイドラインのサイトはこちら)。

 なお同日に、「ペースメーカー、ICD、CRTを受けた患者の社会復帰・就学・就労に関するガイドライン」「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン」「血管炎症候群の診療ガイドライン」「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版)」「川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)」「心疾患患者の学校、職域、スポーツにおける運動許容基準に関するガイドライン(2008年改訂版)」も発表された。

 

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