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日本肥満学会2008
現行の8学会合同・メタボ診断基準に異論続出
心血管疾患や動脈硬化性疾患の「発生を予測できず」

九大の土井康文氏

 第29回日本肥満学会(10月17~18日、大分市)のシンポジウム「心血管、腎臓からみたメタボリックシンドローム」で、わが国の現行のメタボリックシンドロームの診断基準では心血管疾患動脈硬化性疾患の発症を予測し得ないとの指摘が、2つの疫学研究から期せずして相次いだ。

 九大大学院病態機能内科学の土井康文氏は、久山町研究に基づいて、メタボリックシンドロームと心血管疾患発生との関連について報告した。久山町研究では、1961年、74年、88年、2002年の循環器健診を受診した40歳以上の住民から、4つの集団を設定している。このうち、88年の第3集団2452例を対象に、メタボリックシンドロームの診断基準と心血管疾患(虚血性心疾患脳梗塞)の発生との関連について、14年間の前向きコホート研究の結果を発表した。

 土井氏らが最初に検討した診断基準は、日本基準、国際糖尿病連合IDF)のアジア人の基準、米国NCEP基準の3つ。このうち、IDF基準は、腹囲(男性90cm以上、女性80cm以上)が必須項目で、ほかに中性脂肪(150mg/dL以上)、HDLコレステロール(男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満)、血圧(130/85mmHg以上)、空腹時血糖(100mg/dL以上)の4つの構成因子のうち、2つ以上が該当する場合をメタボリックシンドロームと判定する。

 米国NCEP基準では、腹囲(男性102cm超、女性88cm超)、中性脂肪(150mg/dL以上)、HDLコレステロール(男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満)、血圧(130/85mmHg以上)、空腹時血糖(110mg/dL以上)の5つの構成因子のうち、3つ以上が該当する場合を、メタボリックシンドロームと判定する。

 まず、腹囲と心血管疾患発生の相対危険の関連を検討したところ、男性ではIDF基準(90cm以上)の相対危険だけが、90cm未満に対して1.8倍上昇し、有意差(p<0.05)が認められた。女性でもIDF基準の腹囲(80cm以上)の相対危険だけが1.5倍、有意に上昇した(p=0.05)。なお、日本基準では、男性の相対危険が1.2倍、女性が1.1倍だった(いずれも有意差なし)。

 土井氏らは、ここまでの検討で、最も適切な腹囲カットオフ値は男性90cm、女性80cmと考え、このカットオフ値を組み込んだ「修正日本基準」と「修正NCEP基準」を加えた、5つのメタボリックシンドロームの診断基準について、改めて心血管疾患の発生との関連を検討した。

 その結果、男性では日本基準を除いた4つの診断基準で相対危険が有意に上昇し、中でも修正日本基準での相対危険の上昇は2.6倍と最も大きかった(p<0.01)。女性ではすべての基準で相対危険が有意に上昇し、やはり修正日本基準での相対危険が2.4倍と最も大きかった(p<0.01)。

 さらに、心血管疾患を虚血性心疾患と脳梗塞に分け、メタボリックシンドロームの有無と発生の関連を検討したところ、男女ともメタボリックシンドロームの人の発生率はそうでない人に比べ、いずれの疾患でも有意に上昇した。相対危険も同様に2~3倍上昇していた。

 以上の検討から土井氏は、「久山町研究では、心血管疾患発生の予測に最も適するメタボリックシンドロームの診断基準は、腹囲のカットオフ値を男性90cm、女性80cmとした修正日本基準だ」と述べた。

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