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日本高血圧学会2008
会長講演◆インスリン抵抗性と高血圧の関連を追究
臨床、基礎、疫学の多面的な研究成果を総括

札幌医大の島本和明氏

 第31回日本高血圧学会総会の会長を務めた札幌医大第二内科教授の島本和明氏は、会長講演「メタボリックシンドローム高血圧――基礎・疫学から臨床まで」の中で、カリクレイン・キニン系からスタートした同氏の研究の流れを振り返った。特に1988年に提唱されたインスリン抵抗性という新しい概念から、レニン・アンジオテンシン系へと研究を広げ、メタボリックシンドロームとインスリン抵抗性、高血圧との関連にたどり着いた道筋を総括し、最後に最新の研究成果であるアディポネクチンの病態に言及した。

 島本氏がインスリン抵抗性に着目したのは、88年にドイツ・バーデンバーデンで開催された国際シンポジウムに招かれ、その折に他のシンポジストから概念を直接聞いたことがきっかけという。当時、ヒトにACE阻害薬を投与すると血中キニンが増加し、それが降圧と臓器保護に関与するという研究を進めていた島本氏は、帰国後、早速、新たな研究の準備を進めた。そして90年からグルコースクランプ法による臨床研究を開始し、高血圧、糖尿病、肥満、加齢など様々な病態でのインスリン抵抗性の実態を検証していった。

 まず、インスリン非抵抗性高血圧患者とインスリン抵抗性高血圧患者の脂質を比較すると、総コレステロールは同じでも、インスリン抵抗性の患者のHDLコレステロールは有意に低く、トリグリセリドと遊離脂肪酸は有意に高いことを明らかにし、インスリン抵抗性における脂質代謝異常というプロフィールを見出した。

 血圧と腎でのNa貯留、インスリン抵抗性との関連を調べた研究では、当初、正常血圧者に通常濃度の10倍近いインスリンを投与しても尿中へのNa排泄が減るどころか増加するという結果に、「文献とは全く違い、がっくりきた」という。しかしそれは、若年の正常血圧者だったために、インスリンによって腎血流が増加し、Naの尿中排泄が増えるという機序が明らかになった。

 そこで高齢の正常血圧者を対象にしたところ、文献通り、Naの尿中排泄が減ることを確認した。そして、本態性高血圧患者では、若年でも高齢者でもNaの尿中排泄が減ることを確認した。これらの研究から、インスリンに対して内皮機能が重要な役割を果たしているという結果も得られ、「これが後に大きく展開していくことになった」と振り返った。

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