
兵庫医大の増山理氏
心不全に対するループ利尿薬投与は、短時間作用型では予後を悪くするが、長時間作用型ならば無投薬よりも予後を改善するかもしれない。
兵庫医大循環器内科教授の増山理氏は、第12回日本心不全学会学術集会(10月16~18日、東京)のシンポジウム「わが国における医師主導型臨床試験」において、慢性心不全に対する利尿薬に関する知見と、最近患者登録を完了したJ-MELODIC試験(利尿薬のクラス効果に基づいた慢性心不全に対する効果的薬物療法の確立に関する多施設共同臨床試験:Japanese Multicenter Evaluation of Long- versus short-acting Diuretics In Congestive heart failure)を紹介した。
米国の慢性心不全の治療ガイドラインでは、まずACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬が用いられ、利尿薬はその後の選択肢という位置づけだ。ガイドラインには「利尿薬の、心不全に対する長期投与の効果を評価した試験はなく、罹患率や死亡率に対する効果は明らかではない」と記述されている。
しかしながら、欧州の心不全治療薬処方動向をみてみると、拡張不全、収縮不全に対してACE阻害薬/ARBはそれぞれ62%、82%、β遮断薬は39%、46%、強心配糖体は31%、41%、硝酸薬は46%、50%であるのに対し、利尿薬は85%、87%と非常に多く処方され、そのほとんどがループ利尿薬というのが現状だ(Eur Hreart J 2004;25:1214)。日本でも心不全に対して利尿薬の処方件数は多いという調査結果がある。