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特報◆感染性心内膜炎予防のための抗菌薬投与 vol. 1
ACC/AHA心臓弁膜症ガイドライン、大幅改訂される
極めて限定的になった抗菌薬予防投与の適応

ガイドラインのタイトル(Nishimura RA, et al. JACC. 2008;52:676-85.)

 ACC/AHA米国心臓学会/米国心臓協会)のガイドライン改訂委員会は、心臓弁膜症(以下、VHD)2006年版ガイドラインにある感染性心内膜炎(IE)の予防策の部分を改訂し、歯科処置のための抗菌薬予防投与は特定の患者のみに限定すると勧告。8月19日付けのJournal of American College of Cardiology誌に改訂部分を発表した(Nishimura RA, et al. JACC. 2008;52:676-85.)。

 この改訂は07年、AHAガイドライン作業部会がCirculation誌に発表したIEの新規予防ガイドラインを、より簡潔明瞭な形でVHDの最新版ガイドラインに組み込んだものである。今回のIE予防に関しての限定的改訂は、将来のVHDガイドラインの全文改訂に組み込まれる予定だ。

 本稿では改訂の事情も明らかにするため、07年のCirculation誌上のガイドラインからも引用しながら紹介する。AHAの作業部会が下した結論は、「歯科処置の前に抗菌薬の予防投与を行うことには、実際に効果があるというエビデンスはない。であるならば、予防投与はIEを発症した場合に最悪の転帰が予想される患者に限定すべきである」というものだった。

 50年以上前からIE予防の標準として、リスクのある患者へ歯科処置や内視鏡検査を行う際は抗菌薬の予防投与が行われてきた。しかし、長期的観点からこれを支持するエビデンスがほとんどなかったのである。07年の改訂は、これまでの50年間、AHAの勧告の根幹をなしていた方針が変更されるという劇的なものだった。また感染症の現状を省みて、ペニシリンやバンコマイシン、アミノグリコシド類に対する耐性菌の増加のため、以前のガイドラインの意義が変わったことも背景にあるという。

 日常の口腔活動(咀嚼、歯磨き、デンタルフロスの使用)による菌血症への曝露の累積は、年に何回かの歯科処置による曝露よりも何千倍も大きい。したがって、歯科処置時の予防策によって実際に回避できるIEはきわめて限られる可能性が高い。歯科、消化管系(GI)、泌尿生殖器系(GU)の処置施行に際し、患者血中からの溶連菌や腸球菌の分離、そしてIE発症の報告はあったが、リスクが高い患者を除いてエビデンスを見いだすことができなかった。エビデンスは限定されたものでしかないという観点から、AHAはガイドラインを改訂した。

 リスクが高い患者とは、人工弁、IEの既往、先天性心疾患の特定の病態、弁逆流を伴う心臓移植例である。歯科や内視鏡の手技よりも、歯磨きや排便などの毎日の生活行為の方がより危険性が高いくらいであると結論付けられている。

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