心不全患者でも運動は心血管疾患に対して有益であるとする、さらなるエビデンスを研究者は見いだした。
European Association of Cardiovascular Prevention and Rehabilitation(EuroPRevent2009、ストックホルム)で発表された3つの試験から、冠動脈バイパス術(CABG)後、安定した冠動脈疾患や心不全における心疾患の指標が、運動によって改善することが明らかになった。
最近改訂された慢性心不全の管理ガイドラインの共著者であるベイラー大学のClyde W. Yancy氏によると、これらの研究の概要は、最近増えている運動の有益性についてのエビデンスと矛盾するものではないという。
これらの研究によって、「運動と心不全に関する当初の見解は、これまでも再考されてきたし、また再考し続ける必要がある」との考えがさらに確かなものとなったと、Yancy氏は語る。
本学会でドイツ・ライプチヒ大学のMarcus Sandri氏らは、安定した心不全患者において、運動は内皮機能を改善すると発表した。
加齢に伴う運動の効果の減弱も見られなかったという。
この研究グループでは、安定した心不全患者50例を、短い運動を1日4回・4週間継続する運動群と、運動を行わない対照群にランダムに割り付けた。これとは別に、健康な被験者50例も、運動群と対照群にランダムに割り付けた。
若齢者および高齢者ともに、運動をした心不全患者では、血流依存性血管拡張反応が有意に改善した(若齢患者で9.2から13.1、高齢患者で9.0から12.4、P<0.05)。対照群では有意な改善は見られなかった。
「心不全患者におけるトレーニング効果は、高齢患者においても有意に低下していない。これは、うっ血性心不全が最も多いこの患者群において、リハビリテーション介入の可能性を示すものだ」と研究者は述べる。
ライプチヒ大学のSven Moebius-Winkler氏らによるもう1つの試験では、ステントによる冠動脈インターベンション治療よりも毎日の運動トレーニングの方が、無イベント生存率が良かったという。
このパイロット研究では、101例の安定した冠動脈疾患患者に対し、運動プログラムを加えた「保存的」治療またはステントによる血管形成治療のいずれかを行った。
5年間の追跡後、無イベント生存率は運動群が63%だったのに対して、PCI群は40%だった(P=0.037)。
追跡期間中の心血管イベント数は、運動群が19例36件、PCI群が30例55件だった。
「安定した冠動脈疾患の患者なら、最適な薬物治療に加えて毎日の運動トレーニングを行う方が、ステントによるPCI治療より無イベント生存率が良い」と研究者は語った。
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