ファストフード店の密集度が最も高い地区に住んでいる人は、最も低い地区に住んでいる人よりも脳卒中のリスクが13%高かったと、米ミシガン大のLewis B. Morgenstern氏らが米国脳卒中協会(ASA)主催のInternational Stroke Conference(ISC)2009で発表した。
「私たちが生活し子供が学校に通う場所が、私たちの健康に大きな影響を及ぼしている」とMorgenstern氏は警鐘を鳴らす。
単純にファストフードを非難してしまいがちだが、米ミシガン州Henry Ford病院のBrian Silver氏は、ファストフードは単に地域における危険因子の指標の1つに過ぎないと指摘する。同氏はこの研究には直接関与していない。
Silver氏は、大局的な見地からリスクを考えるべきとする。「血圧や心房細動ほど重要ではないが、すべての修正可能な危険因子を見いだそうとするなら、これも1つの危険因子といえるだろう」。
この解析は、テキサス州Nueces郡において脳卒中に関係する広範な要因の関連を調べているBASIC(Brain Attack Surveillance in Corpus Christ)研究の一部として行われた。
能動的および受動的サーベイランスにより、2000年1月~2003年6月に同郡住民から1247例の虚血性脳卒中の発生が確認された。
各症例を居住地区の国勢調査調査区(census tract)と関連づけたところ、近隣のファストフード店数との間に有意な(P=0.02)関連があることが判明した。ファストフード店とは、サービスが迅速、給仕スタッフが少ない、テイクアウトを行っている、サービスを受ける前に支払いをするなどの特徴を2つ以上有するものと定義した。
ファストフード店数が4分位で最上位の地区では、地区あたり平均33店が営業しており、平均12店しか営業していない4分位の最下位の地区よりも、脳卒中の相対リスク(RR)が23%高かった(95%信頼区間[95%CI]:1.08-1.41)。
年齢、性別、人種・民族、社会経済的状態などの人口統計学的要因で調整後も、ファストフード店数と脳卒中のリスクとの関連は有意だった(RR:1.13、95%CI:1.02-1.25)。
同様に、ファストフードの店数が多い地区では、脳卒中発生率が上昇していた。住民1000人あたりのイベント数を店数の5分位ごとに表すと、最下位から順に0~2.0、2.0~3.4、3.4~4.4、4.4~5.4、5.4~8.5だった。
この地域は地理的に他と離れており医療機関も集中しているため、本検討ではすべての脳卒中の発生を補足しているとMorgenstern氏は自信をみせる。
しかし本研究は観察研究であるため、この関連が、実際に脳卒中発症者のファストフード店での消費が多かったことによるのか、運動できる公園があるなど考慮していない他の環境的な要因があったことによるのか、さらには単なる間違った結論に過ぎないのかは明らかにできないと、研究グループは注意を促している。
ただ関連があるなら、「ファストフード店は広く普及しているため、この知見は公衆衛生上非常に重要である」と研究グループは指摘する。Morgenstern氏も「従来からある脳卒中予防対策において、働きかけの対象にする必要があるのは、まさにこうした地区である」としている。
Silver氏は、利益相反がないことを報告している。