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遺伝子変異により壮年期MI発症リスクが2倍に
Genetic Profile May Double Risk for Early MI

2009/02/28

 心筋梗塞(MI)早期発症のリスク評価に遺伝子変異の知見を適用できそうだ。米ハーバード大のSekar Kathiresan氏らは、50歳以前の男性と60歳以前の女性において、9個の1塩基多型SNP)とMIとの間に、それほど強くはないが有意な関連があると、Nature Geneticsオンライン版に報告した。

 国際的な大規模研究でこれらの変異を用いて検討したところ、リスクとの相関性が高い変異を持つ上位20%では、壮年期でのMIのリスクが2倍以上に高まると予測された。

 30~40年前から、MI発症が集積する家系の存在が知られていた。その理由の一部は、例えばピザを好んだり運動習慣がないといったライフスタイルと関連するものだが、ここ1~2年の間で遺伝的要因が発症に寄与していることが分かってきた。

 ゲノムレベルの探索から、主に染色体9p21.3付近にある複数のSNPを含む2~3の候補が、MIまたは冠動脈疾患と関連する候補として示唆されている。

 Kathiresan氏による4段階のゲノムレベルの研究でも、染色体9p21.3における変異は壮年期でのMI発症のリスクとして現れたが、その他3つの変異は過去に知られていないものだった。

 研究グループはまずMyocardial Infarction Genetics Consortiumから、MI症例と有意に関連しているSNPや遺伝子増幅などさまざまな変異を探索した。同組織は、米国、スウェーデン、フィンランド、スペイン、イタリアから、50歳前の男性、60歳前の女性でMIを発症した患者2967例と、これと年齢および性別をマッチさせた3075例の非発症者のデータベースを持っている。

 候補となった遺伝子について、それぞれ数1000例の患者を登録している異なったコホートを用いてさらに3段階に渡り検討した結果、計9個の変異が0.001未満のP値を示した。

 既に判明している4個の遺伝子座は、9p21、CELSR2-PSRC1-SORT1付近の1p13、CXCL12付近の10q11、およびMIA3にある1q41である。

 3つの新しい候補遺伝子を列挙する。

・rs9982601が19%のリスク上昇と関連。同領域は、高張ストレスに反応してナトリウムとミオイノシトールを輸送する蛋白をコードする遺伝子と、遺伝性不整脈に関連しているカリウムチャンネルのサブユニット蛋白をコードする遺伝子の間にある(P=6x10-11)。

・rs12526453が13%のリスク上昇と関連。同領域は様々な蛋白のセリンおよびトレオニン残基を脱リン酸化する酵素をコードしている(P=1x10-9)。

・rs6725887が17%のリスク上昇と関連。同領域はリボソームの生合成と細胞増殖を可能にするいくつかの蛋白と複合体を作る(P=1x10-8)。

 これらの3領域にある遺伝子がMIのリスクを上昇させるメカニズムは不明だが、研究者らはアテローム性動脈硬化を直接促進するためだろうと考えている。

 残りの2つ、LDLR付近の19p13とPCSK9付近の1p32は、MIの危険因子の1つであるLDLコレステロール値と関連している。

 研究グループは、9個の変異すべてについてリスクスコアモデルを作成し、年齢、性別、家系に関連した要因で調整したところ、遺伝子型スコアで上位20%の人は、下位20%の人と比較して、壮年期でのMI発症のリスクが2.23倍高かった(P=1x10-21)。

 このリスクの大きさは、LDLコレステロールなど他の確立された危険因子と同程度だったが、9個のSNPを合わせても壮年期のMIのリスクの2.8%しか説明できなかった。

 だがKathiresan氏は、「これらの遺伝的検討は、MIに対する全く新しい治療法を開発するのに有用と思われるが、より即効的な利益も期待できる」と指摘する。

 例えばスタチンやアスピリンを用いた1次予防は、主に年齢に基づいた高リスク群をターゲットとしているため、若年からアテローム性動脈硬化の疾患進行が始まっている場合、進行がチェックされないまま長期間放置されてしまう可能性がある。

 「若年からスタチンを使用する患者を選定する際の臨床的基準として、MIの家族歴に加えて、この遺伝的プロファイルを加えることができるだろう」と同氏は語っている。

本試験の主な支援は、米国立心肺血液研究所(NHLBI)、the Fannie Rippel Foundation、the Doris Duke Charitable Foundation、the Donovan Family Foundationから受けた助成金だった。

本試験の一部で使用された臨床および社会人口学的データの収集は、ドイツ片頭痛/頭痛学会の支援、およびAstra Zeneca、Berlin Chemie、Boots Healthcare、GlaxoSmithKline、McNeil Pharma(元Woelm Pharma)、MSD Sharp & Dohme、Pfizerから、Muenster大への、均等分担かつ無制限の助成金による支援を受けた。

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