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心停止症例に対する血栓溶解療法、生存率向上せず
No Improved Survival With Thrombolysis in Cardiac Arrest

2009/01/16

 病院外で発症した心停止例の70%は急性心筋梗塞肺塞栓症が原因だ。そのため、心肺蘇生中に血栓溶解療法を行うことにより生存率が向上する可能性が考えられてきた。しかし、ドイツケルン大のBernd W. Bottiger氏らが実施した、前向きのプラセボ対照二重盲検ランダム化試験で、蘇生中にテネクテプラーゼ(本邦未発売)を投与された患者とプラセボを投与された患者の間で、30日生存率に有意差はなかった(14.7%対17%、p=0.36)ことが明らかとなった。試験は有効性が確認されないという理由で中止となっており、院外での心停止症例に対する心肺蘇生中の血栓溶解療法には、生存率を向上させる効果は見出せなかった。この結果は、New England Journal of Medicine誌12月18日号で報告された。

 この試験は、オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデンおよびスイスの66の救急医療サービスシステムを対象とした。

 心停止との報告で現場に急行した場合、移動ICU(mobile ICU)のスタッフは蘇生処置を進めつつ、試験に登録できるかどうか評価した。

 その後、患者をランダム化して、テネクテプラーゼを投与する群とプラセボ群に割り付けた(テネクテプラーゼ投与量:<60 kgは30mg、60-69kgは35mg、70-79kgは40mg、80-89kgは45mg、>90kgは50mg)。ヘパリンまたはアスピリンによる補助療法は用いられなかった。

 2004年1月24日から登録を開始し、2004年12月21日に最初の盲検化データのレビューを実施するまでに443例からデータを収集した。この時点で、患者の30日生存率が極めて低かったために(103例中1例)、患者登録を中止するための臨時提案がなされた。

 試験は、2006年3月23日に一時中止され、2群間で主要エンドポイントの30日生存率に有意差がないと結論づけられた。この無益性を示すレビューが発表された後、2006年7月15日に試験は全て終了となった。

 登録した患者1050例のうち、525例がテネクテプラーゼ群に、525例がプラセボ群に割り付けられた(平均年齢65歳、女性21.1%)。30日後、テネクテプラーゼ群の525例中77例(14.7%)、およびプラセボ群の525例中89例(17%)が生存していた(RR:0.87、95%CI:0.65~1.15、p=0.36)。

 副次エンドポイントである、入院(テネクテプラーゼ群53.5%対プラセボ群55.0%、p=0.67)、自発循環の回復(55%対54.6%、p=0.96)、24時間生存率(30.6%対33.3%、p=0.39)、生存退院(15.1%対17.5%、p=0.33)、神経学的転帰(p=0.69)でも有意差はなかった。テネクテプラーゼ群の方が頭蓋内出血も多かった(2.7%対0.4%、p=0.0006)。

 研究者らは、今回の試験が過去に実施された試験の結果を裏付けることができなかった理由として、過去の試験は規模が小さく、ランダム化されていなかったことを挙げている。また、過去の試験で使われた血栓溶解薬はアルテプラーゼやストレプトキナーゼだった点もあげた。補助抗血栓療法が省かれていたことも、何らかの影響を与えたのではないかと述べている。

 本試験では心停止からテネクテプラーゼ投与までに要した時間が18分と短かったことも、1つの要因であったと考えられるという。一般に、対応までの時間は30分を超える。「対応までの時間が短いことによって、本試験での生存退院率は、心停止患者を対象とした類似する他の試験の2~5倍であったという事実も説明できる」と研究者は指摘した。

 筆者らはまた、本試験の結果は、血栓溶解療法が有効であると推測される心停止患者に対して血栓溶解療法を差し控えることを示唆するものではないと語る。さらに、「レトロスペクティブな解析では、心停止が生じた心筋梗塞患者で、血栓溶解療法を受けて自発循環が回復した場合は、優れた生存率が示されている。したがって、適切な選択を行うことで患者の予後を改善できるだろう」と指摘している。


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