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子癇前症の妊婦は入院させるべきとASH
Hospitalization Recommended in Preeclampsia

2008/12/29

 米国高血圧学会(ASH)は、妊婦高血圧管理に関するposition paperを発表、その中で子癇前症の疑いがあるだけでも妊婦を直ちに入院させるべきと推奨した。シカゴ大Pritzker School of MedicineのMarshall Lindheimer氏らがまとめたもので、Journal of the American Society of Hypertention誌12月号に掲載した。

 子癇前症を有する女性から生まれた子供の半数近く(48%)が出生時低体重で、そのうち11.5%が出生後短期間で死亡し、8.6%が死産であるのが現状だ。

 子癇前症の診断は、血圧が140/90mmHg以上で、蛋白尿(>300 mg/日)があることと定義されている。しかし、妊娠中に正常な現象として心血管機能や体液量が変化するため、診断は容易ではない。そこで、悪化する前の段階で発症を予測する検査が有用となる。

 2004年末まで、子癇前症のスクリーニング法を評価する研究では予測因子を特定できていなかった。しかし、最近の研究から、胎盤で産生された少なくとも2種の抗血管新生因子が、臨床的に子癇前症と診断される8週間も前に、子癇前症患者で上昇していることが明らかになった。なお、この過剰発現の理由は現在のところ不明だ。

 発現が亢進する因子の1つはFms様チロシンキナーゼ1(sFlt-1)で、胎盤成長因子(PIGF)および血管内皮成長因子の受容体だ。sFlt-1のレベルが上昇すると、成長因子の循環量が減少し、内皮細胞の機能不全が起こる。

 もう1つは可溶性エンドグリン(sEng)で、TGFβ-1の内皮受容体への結合を阻害し、これにより血管内皮のNO依存性血管拡張能が低下する。

 ラットモデルにおいてこれら2つの因子の発現量が上昇すると、重度の高血圧、重度の蛋白尿、肝酵素レベルの上昇、分裂赤血球が見られた。

 これらの因子を組み合わせた場合の予測能を検討した研究では、非常に高い精度で発症を予測でき、特に血清中sFlt-1、sEng、およびPIGFの組み合わせの結果が良好であった。しかし、これらの結果の大半は、過去の試験で保存されていた検体を用いたレトロスペクティブ解析で得たものだ。現在さらに大規模なプロスペクティブ試験が進められている。
 
 しかし、高い確率で子癇前症を予測することができたとしても、発症を予防する治療法は有効性に乏しい方法がいくつか知られているだけにとどまるのが現状だ。低用量アスピリンは子癇前症の発生率を10%減少させる、カルシウム摂取量が少ない(600 mg/日 未満)患者に対するカルシウム補給は胎児死亡を含む重篤な有害事象を減少させる、といったところだ。

 子癇前症が発生してしまった場合の管理に関しては議論が進行中であるため、確固たる推奨を示すことはまだできていない。それでも、子癇前症が疑われる妊婦はすべて入院させるべきであると、研究者らは語った。

 子癇前症において唯一知られている治療法は分娩ではあるが、臨月まで時間がある場合は出産を遅らせる手段を講じることもある。出産を遅らせることを決めたケースで、血圧が許容できないほど上昇している場合は、妊娠中に使用してもよいことが知られているいくつかの降圧薬が投与できる。

 これまで交感神経のαβブロッカーであるラベタロールが処方される傾向があったが、より好ましいのはメチルドパ(0.5~3.0 g/日を2分割投与)であると研究者らは指摘している。一方、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬およびアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は妊婦に処方すべきではない。

 「血圧がコントロールされており、母親に致命的合併症が起こる前兆がなく、胎児検査で懸念されるような何らかの徴候がない場合に限り、妊娠の継続が許される」と、彼らは語っている。「子癇性痙攣の管理には硫酸マグネシウムの非経口投与が必要であり、これは予防と治療の両方において、ジアゼパムやフェニトイン投与より優れていることが示されている。しかし、誰に、いつ予防的に治療するのかに関しては意見の一致はみられていない」とされた。

 また、重度の高血圧が24~48時間以内にコントロールできなかった場合は、妊娠がいずれのステージであっても分娩を行う必要があるという。

 Lindheimer氏らは、子癇前症の既往がある女性は、心血管疾患や代謝性疾患のリスクが上昇することも指摘している。「このような場合、健康診断を頻繁に受け、ライフスタイルや食事内容を変えるよう助言する必要がある」と指摘した。

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